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2010年1月15日 (金曜日)

クラウドコンピューティングに関する論文

今日,三省堂本店に立ち寄り,久しぶりに法律雑誌を立ち読みしていたら,面白い論文などが掲載されているものを何冊か見つけたので購入した。その中に,クラウドコンピューティングに関するものがあった。

 濱野敏彦
 クラウド・コンピューティングの概念整理(2)
 NBL 919号(2009年12月15日号)58-63頁

店頭でもざっと読んだが,帰宅途中の電車の中で精読してみた。

とりたてて新しい法律論を展開する論文ではなく,論点を綺麗に整理したといった感じのものだが,どんな論点があり得るかを知りたい人にとっては,思考の整理のために役にたつのではないかと思う。

[追記:2010年2月6日]

この論文の続きがNBLに掲載されていたので読んでみた。

 濱野敏彦
 クラウド・コンピューティングの概念整理(3)
 NBL 921号(2010年1月15日号)62-65頁

 濱野敏彦
 クラウド・コンピューティングの概念整理(4)
 NBL 922号(2010年2月1日号)64-74頁

しかし,この論文は,問題の本質を隠蔽し,真に検討すべき課題から目をそらせる結果を招くようなタイプの論文であり,今後,徹底的に批判の対象とすべき論文だと判断した。とりわけ,情報セキュリティとの関係では,「誰の」統制について書いているのかよく判らない。おそらく,論者自身が思考の整理ができていないか,ある目的で意図的にそうしているかのどちらかだろうと推測したくなるようなものだ。この論文に興味を持つ人は,「クラウドの利用者自身のセキュリティポリシーがクラウド環境では無視され,または,劣後的に扱われてしまう」という問題に全く触れられていないということに留意しながら読むことをお勧めする。この論文では,クラウド側の情報セキュリティについてのみ書かれており,その意味で,法律論文としての新味な部分は何もない。単に普通の情報を集めて整理しただけのものに過ぎない。なお,Googleにおける3重のバックアップ体制についても触れられているが,クラウドのアーキテクチャでは,そのバックアップが相互に完全にミラーとして機能するようになっていなければならず,そのために普通のコンピュータシステムとは異なる非常に困った問題が発生するという点についても全く触れることがない。おそらく,クラウドのアーキテクチャの基本とそこに伏在する本質的問題を理解していないのだろうと想像する。

結論として,私は,この論文(連載)をプラスの方向で評価することはできない。

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