フランス:ネット広告に課税の方針
フランスでは,Googleなどによるネット広告収入に対し課税する方針であることが明らかとなった。下記の記事が出ている。
フランス政府が“Google税”提案 税収でコンテンツ業界を支援
IT Media: 2010年01月08日
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/08/news062.html
国際的なネット企業の場合,利益に対して何らの税金も支払っていないわけではなく,本社のある本国法に基づいて課税され税金を支払っているのが普通だ。また,ある営業部門だけが黒字でも会社全体としては赤字であり利益がない場合には課税されない。
ところが,本国ではない外国で特定の部門の利益に対してだけ課税された場合,もちろん本国でも総利益額に対しても課税されることから二重課税となってしまうことがあり得る。また,会社全体としては赤字の場合,もしかすると特定の部門だけの利益に対して課税している国に対して,総額では赤字であることを理由とする還付請求が認められないかもしれない。
これらのことは,それぞれの主権国家が独立した課税権をもっており,他国における課税の有無とは無関係に徴税できることから生ずることだ。この問題を解決するためには,多国間で税金の分配方法を決定するための国際的な仕組みを構築しなければならないのだが,仮にそのような国際機関ができたとしても,国によって税制が異なっているため同一のベースで税収の分配を決定することができないという問題がある。しかも,どの国でも1ドルでも多くの税金を獲得しようとする意欲において他国に負けるところはないという素朴に貪欲な世界なので,その利益分配の調整が簡単にできるとは想像し難い。
結果的に,「課税する」といわれれば納税しなければならず,課税されたくなければビジネスから撤退するしかないという究極の選択が待っていることになる。
世界規模でネットビジネスを展開すると自動的にこういう問題が発生する。
さて,クラウドコンピューティングサービスの場合,どの国がどのような理由で課税することが可能になるのだろうか?
なにしろ,仮想マシンと物理装置とが分離されているというだけではなく,物理装置は本社が所在する国以外の別の国に所在していることが少なくない。そうでありながら,仮想マシンは本当はその物理マシンを結合したネットワークの中に存在しており,当該物装置は仮想マシンの一部を構成しているとみることができるから,仮想マシンを提供するサービスによって得られた利益はその物理装置によって得られたものとして,当該物理マシンが物理的に所在する国によって独自に課税可能であると解釈する余地がある。もちろん,仮想マシンを使ってビジネスをしている企業についても類似の問題が発生し得る。これらの問題は,これまでずっと誰もが目をつぶってきた問題の一つだ。しかし,これだけ各国の税収が落ち込んでいる状況下では,「どんな屁理屈をつけでても徹底的に課税強化しよう」と考えるのは,どの政府でも全く同じだと考えるのが正しい。要するに,「背に腹はかえられない」というわけだ。
これまた(政府にとっても企業にとっても)ぞっとするような暗雲たれこめる「クラウディな世界」だと言わざるを得ない。
[追記:2009年1月11日]
関連記事を追加する。
France considers tax for Google, Yahoo and Facebook
BBC: 8 January 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8448389.stm
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