英国:違法なP2Pファイルシェアリングの利用者の自動検出をめぐる議論
P2Pファイルシェアリングのための通信かどうかを自動的に検出することは可能だ。また,その通信の発信地を示すIPアドレスを自動的に探知することも技術的には可能だ。しかし,そのIPアドレスを用いて「ファイルシェアリングをしているのが誰なのか」を自動的に特定することが常に可能かというとそうではない。IPアドレスとその利用者とのリンクはネットの外にある現実世界にのみ存在しており,自動的にそのリンクをたどって検出するための方法は存在しない。英国では,この点に関して厳しい議論が発生しているようだ。下記の記事が出ている。
Law firm's piracy hunt condemned
BBC: 29 January 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8483482.stm
音楽著作権団体の顧問弁護士事務所としては,IPアドレスが検出された以上,そのIPアドレスの保有者(←特に携帯電話のアドレスの場合など)が当該P2Pファイルシェアリングの利用者だと推定すべきだと考えるかもしれない。それは,法理論上では「事実上の一応の推定」として考えるといういことを意味することになる。
しかし,そのような推定ルールは本当に正しいのだろうか?
また,仮にそのような推定をすることが肯定されるとした場合,論理的には,携帯電話やPCの保有者(=基本的には資産家ではなく法律家でもない普通の一般市民)に対して「アリバイ立証」のようなことをさせることになるはずだが,そのようにさせることが政策論として本当に正しいことなのだろうか?
よく考えてみなければならない問題の一つだと思う。
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