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2010年1月 7日 (木曜日)

フィルタリングソフトGreen Damを通じて莫大な量のソフトウェアのコードを盗み著作権を侵害したとして,米国企業が中国政府と中国企業に対し提訴

下記の記事が出ている。

 US company sues China for Green Dam 'code theft'
 BBC: 6 January 2010
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8442771.stm

要するに,政府ぐるみで国家規模で著作権と企業秘密を侵害し続けているという主張になる。

訴訟はロスアンゼルスの裁判所に提起されたということなのだが,仮に原告勝訴の判決が出されたとしても中国政府の資産に対して強制執行できる可能性は絶無なので(←米国の判決に基づいて強制執行手続をするのは中国の裁判所及び執行機関なので,絶対に米国の判決の有効性を認めるわけがない。),例えば,「WTOなどの国際機関における交渉や紛議を米国に有利に進める」または「中国政府に対して何らかの政治的意図で牽制を加える」という別の目的があるとみたほうが良いかもしれない。

なお,中国政府がインストール強制を命じているフィルタリングソフトについて,「スパイウェアだ」という主張は以前からあった。

もしこの訴訟の原告の主張が正しいとすれば,中国で仕事をしている全ての日本企業が,このフィルタリングソフトを介して,その企業秘密や重要なデータ等を盗まれている可能性があることになる。

他方で,もしこの訴訟の原告の主張が正しいとすれば,「米国のエシュロンを含む様々な通信傍受システムでも同じようなことが起きているかもしれない」という当然の論理的帰結が導き出されることにもなり得る。

つまり,両刃の剣というわけだ。

訴訟は始まったばかりなので,原告の主張が認められるかどうかは判らないが,注目すべき事件だと思う。

なお,ネットを使っている限り,機密情報を機密情報として管理することは難しいのではないかと思う。機密情報は,電子化せず,純粋な記憶または何らかの物体という方式を採用することによって管理したほうがベターではないかと思われる。ただし,問題は,「記憶力の良い人間は,そんなに数多くは存在ない」ということ,仮に存在したとしても,特定の企業の企業秘密を暗記する担当者を殺せば当該企業を破滅させることが可能になるので,ライバル企業の手先による殺人が増えてしまうかもしれないということなのだが・・・・


[このブログ内の関連記事]

 中国政府のフィルタリングソフト強制政策はビジネスの上でも深刻な事態を招くとの懸念
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-be35.html

 米国:中国のファイルタリングソフト強制に対し訴訟の気配
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-8cf7.html

 中国のフィルタリング政策に非難の嵐
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-906a.html

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