ビルゲイツ氏がGoogleの対中国姿勢を批判
Googleは中国政府によるネット監視を批判し,中国からのビジネス撤退を示唆している。これに対し,ビルゲイツ氏は,Googleの姿勢を批判する発言をしたようだ。その趣旨は,要するに,「米国企業といえども他国では他国の法律に従わなければならない」ということに尽きる。
Web censorship in China? Not a problem, says Bill Gates
Guardian: 25 January 2010
http://www.guardian.co.uk/technology/2010/jan/25/bill-gates-web-censorship-china
論理そのものとしては,ビルゲイツ氏の意見は明らかに正しい。同様に,中国企業もまた,米国内では米国政府による(ホームランドセキュリティ法に基づく)ほぼ完璧なネット監視に服従しなければならない。このことは,日本企業でも全く同じだ。要するに,ビルゲイツ氏は,中国を擁護しているわけではなく,「どの国においても,企業は,その国の国家主権に服することになるし,その国の法律に従わなければならない」という当たり前のことを述べているのに過ぎないと理解する。このことは,「ネットに国境がない」という技術上の事実を踏まえても何ら変わることはない。
さて,ここで考えなければならないことは,日本企業は,「日本以外の国では,基本的に,すべての通信が政府によって合法的かつ完全に傍受されていることがある」ということをデフォルトとしてとらえた上で経営戦略を策定しなければならないということだ。日本国における状況だけを前提にして自社のビジネスの世界展開を考えることほど馬鹿げたことはない。どんなことにつけ,日本でしか通用しない「日本の常識」のようなものがあまりにも多すぎる。それを知らなければならない。ただし,「そのような日本の常識が世界的には通用しない」と主張すると,何となく「世間」から押しつぶされてしまいがちだというのもまた日本の常識の一つだろう。
日本は,どんなことについても,常に「ぬるま湯」状態だと思う。
ちなみに,サイバー法やインターネット法の領域では様々な書籍が出版されているけれども,この問題についてきちんと書かれているものは意外と少ない。そうした中で,このような問題についてもきちんと書かれている書籍として,Cris Reed, Internet Law - Text and Matrialsがある。私自身は,この本のことをとても良い本だと思っており,過去数年間,明治大学の大学院法学研究科での演習科目において教材として使ってきた。一読をお勧めする。
Internet Law: Text and Materials
Cris Reed
Cambridge University Press; 2 edition (7 Oct 2004)
ISBN-13: 978-0521605229
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