Facebookの設立者が「SNSでは,プライバシーはもはや規範ではない」と言明
・・・だそうだ。
Privacy no longer a social norm, says Facebook founder
Guardian: 11 January 2010
http://www.guardian.co.uk/technology/2010/jan/11/facebook-privacy
How online life distorts privacy rights for all
BBC: 8 January 2010
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8446649.stm
まだ25歳なのだそうで,何も社会常識も身につけないまま有名人になってしまったので,こういう馬鹿な発言をすることになるのだろう。これだけわがままそうだと,顧問弁護士の言うことにも一切耳を傾けないタイプの経営者なのではないかと推測できる。
Facebookの未来は相当に暗い。いずれ巨額の損害賠償を求めるクラスアクションが多発し,経営が行き詰ってしまうことになるだろう。
[このブログ内の関連記事]
SNSのプライバシー問題-多くのCIOが問題を意識していない
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/snscio-c957.html
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コメント
キメイラさん こんにちは。
ブログであり論文ではないので,お互い行き違いはありますよ。小倉先生は,直接お会いするととても良い方で,常識もあり,何よりもネット上の加害行為の被害者のために本当に真剣になって尽力してくれる数少ない有能な弁護士の一人です。どうぞご安心ください。
ところで,キメイラさんのコメントを拝読していると,「あ~~,たしかに**年前はこうだったなァ~~」と懐かしさを伴って思い出すことが非常に多いです。単なる感傷や追想のようなものではなく,これはとても大事なことなんだろうと思うんですよ。過去にも現在と同じような議論がなされたことが何度もありました。その具体的な対象が異なっていただけで,本質部分はほとんど同じというタイプの議論が少なくないと思います。私を含め古い世代の人間はそのような問題は既に解決済み・了解済みの問題だと理解しているかもしれません。でも,若い世代は,そもそも過去の経緯を知らないので,「またぞろ出てきたか~~」と嘆かせるような議論を持ち出してしまうことがあるかもしれません。研究者であれば大学院での研究生活を通じて過去の議論の積み重ねをしっかりと学んだ上で立論するという訓練を受けるのですが,司法試験だけの人だとそういう訓練を基本的に受けていませんね。司法試験だけの人でも,勉強家の人は,サイバー法や情報セキュリティ等と関連する学会(情報ネットワーク法学会,法とコンピュータ学会,情報処理学会など)に所属し,自己研鑽として研究を深め,かつての議論の流れも学び,そして自ら論文を執筆しながら実務家兼研究者としての資質を磨いているのだろうと思います。でも,そうでない人は単に「司法試験に合格した人」というだけのことであり,それ以上でもそれ以下でもありません。ここらへんに微妙な差が出てくるのだろうと思います。
そもそも技術について正確に学ぼうと努力していない法律家は論外なんですが,現実にはいろいろと混じっているので,面倒なことが起きるのかもしれませんね。
私は,法学部及び法科大学院の受講学生に対し,過去に学ぶことの重要性を常に力説しています。自分の脳の中にあるものだけをいくら拡大させても駄目です(←単調な能力的肥満状態が発生するだけです。)。他のリソースを自分の中に取り込み続ける努力をしなければ自分の能力が拡大することなど絶対にありません。とりわけ,過去に現実にあったことから得られる教訓にはとても大きなものがありますね。まさに温故知新です。
今後もよろしくお願いします。
投稿: 夏井高人 | 2010年1月21日 (木曜日) 09時12分
夏井先生
ご応答ありがとうございます。
まずもってエントリが荒れる誤読原因となる紛らわしい表現を使ったことをお詫びします。m(_ _)m
ご指摘のとおり,ネームはTCP/IPなどのプロトコル上のテクニカルな面では,記号やデータに過ぎず,特別な意味を持ちません。どうも法曹の方々には「署名(シグネチャ)」という概念から,独特の意味付けをなさりたいようですが,もともとIPアドレスや各種ヘッダはマシンやゲートウェイだけに自動的にリンケージされているに過ぎないのを誤解されているようです。
だからfromもsenderも手作業で人為的に入力するのが本則なのをご理解されないのでしょう。シスオペやアドミンでも,マンマシンインターフェイスでは,SU不正アクセスや物理的オペレータすり替わりで容易にピギーパックができた1980年代を彷彿させます。
投稿: キメイラ | 2010年1月21日 (木曜日) 00時45分
キメイラさん こんにちは。
「実名」と言っても「符号」に過ぎないので,それによって特定の個人を完全に識別可能かどうかは疑問ですし(←日本国の戸籍上の本名でさえ家事審判手続によって変更することが可能ですし,海外ではそもそも戸籍制度がまったく存在しない国が圧倒的多数です。),そもそも「実名」とは何を指すのかということが自明のことのようで,実はそうでもなく,逆に(理論的に詰めていくと)自明どころか非常に曖昧な概念なのでよくわからないということもあるんですが(←あくまでも一般論ですが,自明とされている事柄の多くは,自明だと一般に信じられているがゆえに,「概念」としての完全性の検証がほとんどなされていないということがしばしばあります。),それはさておき,まあそのようなご意見もあるということは知っています。
ただし,私も賛成できませんね。(笑)
本当は,「同一性識別」って非常に難しい問題なんですよ。実名だけでどうこうという問題ではありません。特に,二重人格のような場合を想定してみると,その場合の「その人」とは何のことを指しているのかまったくわからないという事態に陥ってしまいます。そして,この例では「実名」という要素は何の役にもたちません。
似たようなことはいくらでも例としてあげることができますが,面倒なのでやめときます。(笑)
他方では,「完全な統制」をめざすことが本当に正しいことなのかどうかも検討の余地がありますね。世間には冗長性というものも必要ですよ。
投稿: 夏井高人 | 2010年1月20日 (水曜日) 16時07分
「鳩が豆鉄砲」騒動も鎮火したようなので弁明しますと,私がこのエントリで念頭に置いた某弁護士は,
>httpとpop3とを問わず,「sender」ヘッダと実名表記を常時強制するように関連RFCを一律に変更せよ
という過激な意見をCUG-MLで主張されて技術屋仲間から総スカンくらった30代の弁護士の方です。
Facebookの創設者と同様に視野が狭く,sender実名表記なら,SNSの実名実年齢表記を原因に児童誘拐や性的虐待の被害に遭う英米実例をどうやって防ぐのか,という批判には,「別問題で警察が児童虐待犯を検挙すればいいだけ。」という方でした。
投稿: キメイラ | 2010年1月20日 (水曜日) 14時31分
小倉先生
小倉先生は「どんな場合でも常に実名表示すべきだ」と主張するような馬鹿な弁護士ではないので、小倉先生がその集合に含まれるという意味でキメイラさんのご意見に賛成したつもりはありませんけど…(笑)
投稿: 夏井高人 | 2010年1月17日 (日曜日) 09時55分
特定商取引法を含め、違法な行為をしていない人に対しても実名の表示を義務づけている法律はたくさんあります。それは、いざトラブルが発生したときに、トラブルを当事者間で迅速に解決するためには有益なことです。その人の行為が違法であることを、違法性阻却事由がないことを含めて、裁判所にて明らかに証明しない限り、その人がどこの誰であるのかを知ることができないということになると、紛争解決のための時間的、費用的なハードルが跳ね上がり、結果、悪質な業者を利することになります。
「日本でもネットで実名強制すべしと我儘を言ういい大人の弁護士がいます」というキメイラさんの発言は、だからといって、ネットで種々の行為を行う人々に対し実名を表示することを強制する法律は、被害者側の「我儘」の賜物だということを含意しているのでしょう。
投稿: 小倉秀夫 | 2010年1月17日 (日曜日) 08時58分
小倉 先生
夏井です。
小倉先生のおっしゃりたい趣旨は理解しました。
小倉先生は弁護士ですし,その職責として加害者である発信者情報の開示を求めることのできる権利がある場合にはその権利を行使できるのは当然のことだと思います。
しかし,ここでの話題は,プライバシーの権利について十分な理解がないかもしれない顧客(被害者予備軍)に対するSNAの経営者としての姿勢に何か問題はないかということだけであり,その意味で小倉先生とは全く正反対の立場にある人のことを述べているつもりだし,キメイラさんのおっしゃりたいこともそうなんじゃないでしょうか?
要するに,ここでの文脈は,名誉毀損その他何らかの加害行為をしている者が匿名で行動している場合において,その加害者の特定に必要な個人情報の開示を求める弁護士の業務等とは一切無関係のことだと思うんですけど・・・^^;
投稿: 夏井高人 | 2010年1月16日 (土曜日) 21時42分
第三者との間で法的な紛争が生ずる蓋然性が一定程度ある行為を反復継続して行う者について、民事訴訟を提起することができる程度の個人情報(氏名・住所等)を明示させることが、プライバシー権の侵害であって許されない行為だとは私には思えませんし、被害者(または被害者から多数の相談を受けた法律家等)が、そのような蓋然性を有する行為を反復継続して行う者に氏名住所等の開示を求めることが「我儘」だとは到底思えなかったりします。
少なくとも個別の事案を警察が取り上げてくれて被疑者を検挙してくれるまでは被害者が民事的な救済を受けることができず、ごく例外的に警察が動いてくれた場合を除き被害者が泣き寝入りを強いられる社会を放置してまで、そのような行為を行う者の氏名・住所等の情報が「被害者に対してまで秘匿できて当然の情報」という強固に保護されるべきプライバシー情報にあたるのかというと大いに疑問です。
投稿: 小倉秀夫 | 2010年1月16日 (土曜日) 18時38分
小倉 先生
夏井です。
「当てこすり」とは全く思いませんでしたが・・・^^;
まあ,未成熟と言えば,この私も万年超未成熟人間なので,他人のことはあまり言えませんけどね。(笑)
投稿: 夏井高人 | 2010年1月16日 (土曜日) 17時05分
キメイラさんによる私に対する当て擦りに「まったく同感」してしまうなんて、ひどいですね。
投稿: 小倉秀夫 | 2010年1月16日 (土曜日) 11時34分
キメイラさん こんにちは。
よく理解し合っている少人数の仲間の中で,お互いに秘密のない生活をすることはしばしばあることで,夫婦というものがその典型かもしれませんね。
しかし,何万人も利用者が存在するという環境の下では,「自分が自分のプライバシーを提供してしまうことがどのような意味をもち,それが将来どのような結果を招いてしまうか」ということをよく考えないで,または,考えることができずに行動してしまう利用者だってたくさんあるでしょう。そのような環境であることを前提にしつつ,「プライバシーは規範ではない」と言い放つことは無責任の極みだと思います。
消費者というものを愚民視するつもりは全くありません。しかし,非常に多くの消費者が存在する場合,その中にはいろんなタイプの者が含まれることは当然のことですから,経営者というものはそういうことも理解しそのことを踏まえないといけないのだろうと思います。
それでも問題が発生してしまうので,様々な消費者保護関連の法令が存在します。米国では,更にコモンロー(判例法)として明らかにされている規範がたくさんあります。
SNSのビジネスは自由かもしれないし,その中の規範をどのように設定するかも自由かもしれないけれど,法という規範が認める範囲内の自由しかそもそも存在しておらず,それをはみ出てしまうと,あとで痛い目に合うんですよ。
この社長のような若者は,元気がよいことは認めますが,思慮が大幅に不足していますね。その従業員と顧客がかわいそうです。
投稿: 夏井高人 | 2010年1月13日 (水曜日) 07時18分
夏井先生,ご応答ありがとうございます。
ぶっちゃけ,Facebookの設立者は,SNSの批判から,論理も根拠もない自己正当化をしているだけなんでしょう。キツイ言い方をすれば,放漫なジコチュウか,臆病者の開き直りかも知れません。
未成熟で社会常識を身に付けないまま大人になった専門家や経営者に多いタイプかも知れません。
投稿: キメイラ | 2010年1月13日 (水曜日) 00時57分
キメイラさん こんにちは。
まったく同感です。
それにしても,自分から他人のプライバシーを根こそぎにしておきながら,あとになってそんなことを言うなら「一体誰がそうしたんだ!」と言い返したくなりますね。要するに,カナダのプライバシーコミッショナーからきついお叱りを受けたということからも判るように,お子ちゃまがビジネスやっているのが悪いんだと思います。
私個人としては,結局そういうことになるのがわかっているから,SNSは利用しません。現在利用しているネットワーク上のリソースは全て情報を公開するために利用しております。
更に,システム管理者の過失等による漏洩の危険性も考慮して,私が保有する機密情報等はすべてネット上から撤去してしまいました。公開情報だけなら取られても別に何ともありません。みんな知っていることばかり(誰でもアクセスできる情報ばかり)なので,何の価値もないのでしょうけどね。(笑)
投稿: 夏井高人 | 2010年1月11日 (月曜日) 17時28分
日本でもネットで実名強制すべしと我儘を言ういい大人の弁護士がいますので,Facebookの設立者は,これはこれで馬鹿気^H^H^H若気の行ったり来たりかも(苦笑。個人情報を含むプライバシーデータや特に画像がP2Pネットで放流されている事案を見ればむしろ悲惨だと思います。ホントは。
既にデータバンク社会の問題点として,佐藤幸治先生が30年前に看破したとおりで,ネットの方こそ伝搬性が,即時性・拡散性・抗たん性・長期残存性・複製増殖性・無手順性が,はるかに強力だから,むしろより現実社会よりコンピュータネットワークの方が,プライバシーの保護的な規制が強く求められると思います。
投稿: キメイラ | 2010年1月11日 (月曜日) 15時09分