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2009年12月 3日 (木曜日)

オーストラリア:RFID腕輪による服役者の監視に失敗

服役者の解放処遇,性犯罪者の終生監視,その他の矯正保護上の目的のためにRFIDタグを内蔵した腕輪など無線による遠隔監視装置が各国で導入されつつある。オーストラリアでもRFIDタグを内蔵した腕輪が導入されているが,無線による追跡が不可能となるという事故が発生したようだ。

 Prisoner tracking devices lost
 Canberra Times: 03 Dec, 2009
 http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/prisoner-tracking-devices-lost/1694838.aspx

ちなみに,生体の外部に装着するタイプの装置の場合,必要な工具等を準備することが可能であれば,それを破壊したり取り外したりすることは可能なはずであり,金さえ払えばそのような工具を提供してくれる地下組織やマフィアのような組織が誕生することは誰にでも容易に想像できることだろうと思う。

おそらく,今後は,「RFIDチップを内蔵した超小型のカプセルを身体内に埋め込む」というやり方が導入されることになるだろう。

しかし,この場合にも問題がないわけではない。逃亡するためには,自分の手足など身体の一部を切り落とすくらいのことは平気でやってしまうかもしれないからだ。

なお,一般に,生体の同一性識別の問題は,非常に深刻な多数の問題を含んでいる。映画『マイノリティレポート』に出てくるような眼球を交換するといったおどろおどろしたシーンを想定しなくても,いくらでも悲惨な場面というものを想像することができる。例えば,ウイリアム・ギブソンの小説の中では,身体内に埋め込まれた個人識別用無線チップを奪うために三菱商事のサラリーマンが殺されるという場面が出てくる(←なぜか日本人商社マンが被害者になっている点が非常に興味深い。)。要するに,個体識別を厳格化すればするほど,殺人が激増するかもしれないということが示唆されるのだ。他方で,監視する側もまた生きた人間であるため,監視側の人間(またはその家族)に対する物理攻撃が激増することが想定される。それを避けるためには,監視側の人間は,生涯,監獄よりもさびしい場所で孤独に生きるしか自分の生命・身体を守ることができなくなってしまうかもしれない。あるいは,監視側の人間だけが住む特別の町のようなものが構築されるかもしれない。しかし,そこでは,個人に対する物理攻撃とは全く比較にならないほど凄惨なジェノサイドのような地獄絵図が現実化してしまうかもしれない。

人間は,地球上に存在する動物の一種だ。動物として生存するためには必要な要素がいくつかあり,その要素の一つでも破壊されると生きていくことができない。しかも,そのような必須要素を破壊することは,実は比較的簡単な事柄に属する。現に,自然界の野生生物はどんどん絶滅しつつある。

つまり,この分野に関する限り,完全な解は存在し得ない。

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