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2009年12月 8日 (火曜日)

楽天トラベルのシステムを悪用した虚偽ホテル予約事件

楽天トラベルのホテル予約システムとポイントサービスを悪用し,虚偽のホテル予約を大量に行ってポイントを大量に稼ぎ,そのポイントを換金していたという事件が発覚した。

 楽天トラベルで虚偽予約 全国1600ホテル被害か
 産経ニュース: 2009.12.7
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091207/crm0912071230006-n1.htm

システムにおける本人確認機能の弱さにはあきれ果ててしまうが,それはさておき,この事件を法的に解析してみると,結構難しい問題があることが判る。

逮捕状の罪名は,業務妨害罪となっている。確かに,カラのホテル宿泊予約がなされたわけだから,予約を受けたホテルの被害はある。しかし,業務妨害の「故意」をどうとらえるかが一応問題となり得る。事実の認識は明瞭にあるのだから,業務妨害について未必的故意で足りるという見解に立脚すれば,業務妨害は成立可能だろう(もちろん,その程度の認識では未必的故意としても足りないという見解に立脚すれば,業務妨害罪としては無罪とせざるを得ない。)。

しかし,この被疑者の主観的意図は,ホテルの業務を妨害することにあったのではなく,換金目的でポイントを大量に稼ぐことにあった。この点をどのように理解するかが最大の問題となる。

ポイントは財物ではない。したがって,1項詐欺罪が成立しないことは明らかだ。

では,2項詐欺罪はどうだろなるかというと,被疑者らは,「人」を騙す行為を実行しておらず,虚偽内容の情報を入力して架空予約を実行させただけだ。したがって,2項詐欺罪も成立しない。

となると,電子計算機使用詐欺罪の成否が問題となる。ところが,直接に獲得したのはポイントという電磁的記録であり,それ自体としては財産権といえるのかどうか疑問がないわけではない。もちろん,一般論としては,財産権といえるだけの実質を有するポイントやマイレージ等も存在するだろう。けれども,私は,楽天の会員ではないし,楽天のポイントシステムがどうなっているのか,その詳細を全く知らない。

この問題を解明するためには,事実に即して判断することが大事なので,約款を含め,楽天のポイントの法的性質を徹底的に解明する作業を行わないと正しい結論が導き出せないように思う。

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