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2009年12月17日 (木曜日)

米国:官庁はクラウドコンピューティングサービスを好まない?

米国連邦政府は,クラウドコンピューティングの導入を推進しようとしてきた。ところが,ある問題に直面しているようだ。それは,どの官庁もそれぞれ独自の雰囲気と色彩をサイトを持ちたいということだ。そして,そのような要求にいちいちこたえていたのでは,クラウドコンピューティングサービスではなくなってしまうという本質的な問題が浮上してきたようだ。下記の記事が出ている。

 Delays in Networx transition put cloud computing decisions on hold
 nextgov: 12/16/2009
 http://www.nextgov.com/nextgov/ng_20091216_6034.php

このような問題は,官庁のみならず,既存のクラウドコンピューティングサービスの利用者から既に何度か指摘されてきたことだ。

その原因ははっきりしている。クラウドコンピューティングでは,個々の利用者毎に個別にカストマイズされたサービス提供をしない。あたかも幼稚園の生徒と同じように,同じかたちの征服を着用し,同じかたちの食器で食事をし,同じ種類の遊具で遊ぶことになる。

もちろん,カストマイズできるようにすることは理論的には可能だ。しかし,それでは普通のシステム構築と同じだけのコストが当然発生することになるので,利用者にとってのメリットは全くない。しかも,クラウドコンピューティングサービスの提供者は,利用者毎に異なるシステムやアプリケーションを構築して提供する能力を全く持っていない。

ここでよく考えてみなければならないことがある。それは,自社の能力を他社よりも強め他社に対して優位な地位にたつためには,より優れたアプリケーションやシステムやサービスを活用しなければならないということだ。しかし,パブリッククラウドでは,基本的に,それはできない。同じパブリッククラウドの利用者であれば,同じアプリケーションを同じシステムの上で同じように提供してもらうしかない。これでは他社との競争において最初から負けのポジションに自らを置いてしまうのと同じことになる。

というわけで,そんなに早くない将来,パブリッククラウドは飽きられ捨てられることになるだろうと予測する。

なお,少し前の記事でデータセンターサービスが供給過剰になっているのではないかという意見を書いたが,どうやら本当のようだ。おそらく,クラウドという名で提供されているサービスも同じであり,あっという間に値崩れを起こし,ビジネスとして成立しなくなってしまうだろうと予測する。

賢い経営者は,安直なコスト削減を採用すべきではない。

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