オーストラリア:ヒト遺伝子特許の禁止を目的とする法案をめぐる議論
オーストラリアでは,ヒト遺伝子関連特許の禁止を求める勢力とそれに反対する勢力との攻防が続いているようだ。
Patently tricky dispute drags on: who owns your genes
Australian: December 12, 2009
http://www.theaustralian.com.au/news/health-science/patently-tricky-dispute-drags-on-who-owns-your-genes/story-e6frg8y6-1225809470891
Matters of Public Interest - Gene Patents
Bill Heffernan: November 12, 2008
http://www.billheffernan.com.au/news/default.asp?action=article&ID=53
Biotech sector 'on its knees' if gene patents banned: rpt
Medical Search: 6/11/2009
http://www.medicalsearch.com.au/News/Biotech-sector-on-its-knees-if-gene-patents-banned-rpt-41844
一方は倫理面を重視し,他方は産業上の利益(医薬品や遺伝子治療など)を重視する。このような対立構造は,商業捕鯨をめぐる見解の対立と少し似ている部分があるかもしれない。
また,本当は,大学では特許の存在が自由な研究を妨げるという考え方が比較的強い。事実,特許の存在は,大学における研究にとってインセンティブになっていることがあり得るけれども,現実には支障となってしまっていることが珍しくない。先行して特許を取得した研究者は,他の競争的な研究者の研究活動を合法的に阻害することができることにもなる。他の研究者や企業等に先に特許をとられてしまった研究者は,その研究テーマをあきらめるか,または多少手品的な特許の取得をめざすしかなくなってしまう。少々危ない手法を使ってでも何らかの知的財産権や企業に利益になる「何か」を獲得しないと資金提供を受けられない仕組み,それが産学協同なるものの本質だからだ。ここらへんのところが理想と現実の相違が最も顕著になる部分であり,産学協同の建前と本音の裏にある真の問題点ともいうべき部分かもしれない。
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オーストラリア:ヒト遺伝子特許を禁止する法律が提案される見込み
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http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/dna-f0a6.html
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