米国:使用者が従業員の電子メールを読むことはプライバシー侵害になるか?
使用者が労働者の電子メールを読むことは,日本ではいまや常識化してしまっている。そのための各種ツールが大量に売られている。情報セキュリティの確保や営業秘密の保護の目的上,やむを得ないことではある。また,就業時間中に私用で電子メールをやりとりするきことは,理論的には単なる怠業となることは疑うべき余地がない。したがって,日本の職場では,事実上,プライバシーが存在しないのと同じような状況になってしまっている。しかし,使用者に電子メールを読まれてしまう労働者にとってはあまり気持ちの良いものではないこともまた疑うべき余地がない。
米国では,第9巡回区控訴裁判所が,この問題について違憲であるとの判決をしていたところだが,その控訴審判決に対する連邦最高裁の判断が注目を集めているようだ。
Supreme Court may hear appeal on workers' text message privacy
Los Angels Times: December 14, 2009
http://www.latimes.com/news/nation-and-world/la-na-scotus-privacy14-2009dec14,0,5052175.story
私は,この問題について,「就業場所内の休憩所における従業員のプライバシーとその侵害」(判例地方自治299号89頁)という記事を書いたことがある。
事実が先行し過ぎてしまってあまり議論にならない論点の一つとなっているかもしれないし,「こちらをたてれば,あちらがたたない」といったような感じの関係になっているのでなかなか面倒な問題の一つかもしれないが,米国の裁判所の動向を読みながら,再考すべき時期が来ているかもしれない。
[追記:2009年12月16日]
関連記事を追加する。
Text-Message Case Could Redefine Workplace Privacy
npr: December 15, 2009
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=121470151
[追記:2010年2月10日]
関連記事を追加する。
Electronic Privacy and the Supreme Court
law.com: February 09, 2010
http://www.law.com/jsp/lawtechnologynews/PubArticleLTN.jsp?id=1202442982294&Electronic_Privacy_and_the_Supreme_Court
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