Googleがリアルタイムデータ表示機能を強化
サーチエンジンによる検索は,実際には検索ロボットが集めてきた検索結果を集積したデータベース内のデータに対する検索であることが多い。したがって,特定のコンテンツが現実にWeb上に出現した時点とそのコンテンツが検索エンジンによってヒットするまでの時点との間には一種のタイムラグが発生することになる。また,検索結果が表示された後に新たなデータがWeb上に出現しても,表示された検索結果が自動的に更新されるわけではない。つまり,検索結果は,常に何秒か過去(あるいは,何分か,何時間か,何日か過去)の世界のものなのであり,リアルタイムのものではない。そこで,Googleは,このタイムラグを可能な限り短くし,Twitterなどからのデータを常にアルタイムデータとして自動更新して表示することを可能とする機能を強化したようだ。下記の記事が出ている。
Google includes real-time data in search results
BBC: 7 December 2009
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8400230.stm
このような機能は,便利な面と不都合な面とがある。
例えば,ある文章を公衆送信した後,その中に誤記や間違いなどがあることに気付いて修正した文章を公衆送信し直したとしても,Googleのキャッシュの中には更新前の文章が残っている可能性があるからだ。
このことは,Googleに限ったことではなく,全ての検索エンジンについて言えることかもしれない。
インターネットが登場する以前の世界では,文章をコントロールする正当な権限は,著者または出版社(場合によっては隣接権者)のみが有していた。そのことは,現時点でも法的には変わりがないだろう。
しかし,現時点では,ネット上のキャッシュというものが存在する以上,ネット上の表現物について,その著者等の物理的コントロールが及ばないところに無数の複製物が蓄積され利用されることになる。
この点に関しては,日本国の著作権法が改正され,インターネット検索において集積されるキャッシュを適法に実行することができるようになった。したがって,著作権法上の問題としては一応解決がついていることになる。また,この法改正によって,著者等以外の者(検索エンジンの運営者)が一定範囲でキャッシュ化された他人の著作物に対する物理的なコントロール権を有することが法的に承認されたことになる。
しかし,それ以外の法領域に関しては問題が残されているかもしれないということに留意すべきだろうと思う。例えば,著作者人格権とは別の意味での人格権侵害のような問題が発生するかもしれない。とりわけ,Twitterなどのキャッシュデータを自動的に連結して「ライフログ」のようなプロファイルデータが自動的に生成された場合,それもまたキャッシュの一種として合法的に保持されることになるだろう。もしそのようなプロファイルデータが誤りを含んでいる場合,それは不法行為の一種を形成することがあり得る。そして,更に問題なのは,仮に不法行為が成立する場合であっても,その被害者は,法的な対処方法をほとんどもっていないというだけではなく,事実上の対処方法もほとんどもっていないということだ。
「インターネットの利用をあきらめなければ安全に生活できない世界」に入ってきてしまったのかもしれない。
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