出願された特許について,先願たる地位を有しないことの確認を求める請求を却下し,その出願された発明について特許を受ける権利の共有持分を有することの確認請求を認容した事例(大阪地方裁判所平成21年10月8日判決)
産学共同という美名の下に,世界各国において,大学(研究者)と企業との共同研究開発が推進されてきた。
しかし,共同研究の成果である発明等が得られない場合にはともかく,それが現実のものとなってくると,その発明について独占的な利益を確保したいと願う企業との間に軋轢が生ずることがあり,当該発明等の権利の帰属について法的な紛争に発展することがある。このことは,世界各地の主要な共同研究においてしばしばみられることであって,ときとして当該研究費用の一部を補助していた政府や地方自治体までもが権利主張することがあり,人間の業の深さのようなものを理解する上での最適の素材の一つとなっている。
本件(大阪地方裁判所平成21年10月8日判決)は,そのような文脈の中で生じた紛争事例の一つと言えるだろう。
大阪地方裁判所平成19年(ワ)第8449号先願たる地位の不存在確認等請求事件(本訴),平成19年(ワ)第14328号共有持分不存在確認請求事件(反訴)判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091021140506.pdf
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事案の概要
大阪大学(原告)及びバイオメディスク株式会社(被告)が共同研究(膜表面分子非可溶性エピトープの研究)を行った成果として得た発明について,当初の契約においては研究の成果である知的財産権の出願をするときは共同出願することとし,その共有持分については協議して定めると約定していた。
ところが,被告は,共同研究の過程で開発された「細胞表面のCD20抗原に結合することにより特異的な生物学的反応を誘導するモノクローナル抗体」について,被告のみで特許出願をし,その後,この共同研究は中止された。
原告は,原告のみを出願者として被告の出願と同内容の出願をし,被告の先願に対する優先権を主張した。
これに対し,被告は,出願にかかる発明について特許を受ける権利全部が被告に属するとして反訴を提起した。
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判決理由中の重要部分
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(先願たる地位を有しないことの確認を求める利益)について
確認の利益は,判決をもって法律関係の存否を確定することが,その法律関係に関する法律上の紛争を解決し,当事者の法律上の地位の不安,危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められるものである。
しかしながら,先願たる地位が争われる特許出願は,特許登録のための実体的・手続的要件が認められるかが未だ不明であり,先願たる地位の存否の判断が,将来,特許庁においてなされるか否かも不明である。したがって,原告が確認を求めている権利あるいは法的地位に係る不安は,未だ現在化していないといえる。
また,原告自身が「事実上, の尊重」という効果を主張しているように,特許出願における先願たる地位の存否については,特許庁が第1次的な判断権を有しており,その判断は,法律上,同一事実に係る裁判所の判断に拘束されることはない。したがって,裁判所が先願たる地位の存否について確認を行うことは,紛争解決にとって有効とはいえず,原告の法律上の地位の不安,危険を除去するために必要でも適切でもない。
以上のとおりであるから,原告には,先願たる地位を有しないことの確認を求める利益がない。
2 争点(3)(本件発明の発明者及び寄与の割合)について
(1) 本件発明に至る経緯
前提事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(一部争いのない事実を含む。)。
ア 大阪市立大学の研究
かねてから,大阪市立大学では,Nが中心となり,鳥取大学のCも加して,すい臓がんに対するND2抗体の研究が行われていた。
米国バイオ医薬開発ベンチャー企業の日本法人代表者であったDは上記研究を知り,同研究をベンチャービジネス化することを提案し,Dの紹介により,大阪大学のAも同研究に参加して,被告が設立されることになった。もっとも,D自身は被告の役員とはならず,Dの依頼によりEが代表者となった。
イ 被告の設立と大阪市立大学との共同研究
Dは,ND2抗体の開発だけでなく本件共同研究も行えば,全薬工業株式会社(以下「全薬工業」という。)から研究資金の提供を受けることができると考え,NやCに対し,本件共同研究も併せて行うよう勧めた。その結果,平成15年5月ころから,本件共同研究が行われるようになった。
本件共同研究においては,Cが,鳥取大学で抗原を作製して,大阪市立大学に送付し,L が,大阪市立大学で抗体作製及びCell ELISA によるスクリーニングを行っていた。また,抗体作製は,特殊免疫研究所にも外部委託されており,特殊免疫研究所では,G が,L から抗原や抗体の送付を受け,さらには指示を受けながら,抗体作製及びCell ELISAによるスクリーニングを行っていた。
当初,Cは,抗原として,大腸菌を使って作製したCD20-GST を用いていたが,CD20結合性を有する抗体を得ることができなかったところ,タンパク質の構造研究を専門とするBから,CD20-GST は,自然な立体構造が保持されていないため,抗原として適切でないとの指摘を受けた。そして,Bから動物細胞を用いることを提案されたCは,Bと話し合った結果,抗原として,チャイニーズハムスターを使って作製したCD20/CHO 細胞を用いることにし,平成15年11月ころまでに,これを作製した。そして,G も,免疫及びスクリーニングにCD20/CHO 細胞を用いるようになり,このころから,CD20結合性を有する抗体が,多く取得されるようになった。
ウ 共同研究当事者の変更
被告は,研究開発資金残額が少なくなったこともあり,それまで大阪市立大学に置いていた研究の中心を,適切な設備・人材を保有し,マッチングファンド(産学協同を推進するため,大学が研究開発能力のみならず,研究経費も負担し,特定の研究テーマについて企業と共同研究を行うための予算であり,大阪大学大学院工学研究科内に設立された大阪大学フロンティア研究機構〔FRC〕が管理していた。)の利用が可能な原告に移すことを計画し,平成16年2月27日には,Aを通じて,原告の研究室の使用を申し込んだ。
同年3月15日,被告は,研究の中心を原告に移行し,フロンティア研究機構のマッチングファンドを利用することを正式に決定しフロンティア研) 究機構の承認を得て,同年4月から,「膜表面分子非可溶性エピトープの研究」というテーマで,共同研究が開始されることになった(甲12)。そして,被告は,同年4月1日にKを,同年6月1日にJを,それぞれテクニシャンとして雇用し,Kは,鳥取大学に派遣されてCの下で,Jは,A’研究室に派遣されてBの下で,それぞれ本件共同研究に携わるようになった(甲13~15)。その後,被告は,Bとの共同研究者として原告に派遣する人材を探していたが,結局は見つけることができなかった。
エ 開発会議の開催
本件共同研究についての進捗状況は,月に1回程度行われる開発会議で報告され,ここで結果の共有が行われ,研究方針が決定されていた。
また,開発会議には,被告への資金提供を検討している全薬工業の従業員らが参加し,報告を受けることもあった。
オ RI 標識法に代わる親和性測定方法の開発とその有効性
(ア) 平成16年6月19日,E,C,B,Jの出席の下,開発会議が行われ,Cから,群馬大学に依頼していたRI(ラジオアイソトープ)標識法による解離定数の測定結果が思わしくないこと,Cell ELISAは,細胞をグルタルアルデヒド固定しているため,抗体が変性してしまうという問題があることなどが報告された。
そこで,Bは,RI 標識法を用いない方法で,自ら解離定数の測定を行うことにした。
(イ) 平成16年7月9日,E,C,G,B,L,Jの出席の下,開発会議が行われ,Bから,新たに開発した,RI 標識法を用いない蛍光遠心法による結合親和性測定の実験結果が報告された。また,同日,引き続いてIや全薬工業の社員も出席しての会議も行われ,全薬工業側に対し,本件共同研究の進捗状況について説明が行われた。
カ 蛍光遠心法による結合親和性の測定とCell ELISA 法における細胞の非固定の方針決定
(ア) 平成16年7月28日,Bは,Eに対し,O 博士と電話で話して聴取した内容として,Cell ELISA の結果が悪いこと,大腸菌を利用する免疫は勧められず,CHO 細胞を使用する免疫はよいやり方であること,細胞を固定する方法でのスクリーニングは妥当でないこと,マウスの腹水を用いる場合,抗体の濃度が疑わしいことなどを報告した。
(イ) 平成16年8月7日,E,D,C,G,B,L,Jらの出席の下,開発会議が行われた。
Bは,改めて,O 博士から聴取した内容(前記(ア))について報告を行い,Cell ELISA は固定しない方法で行うこと,蛍光遠心法による測定を行うこと,抗体はマウス腹水由来のものではなく,培養上清で精製されたもので行うことなどが決まった。
キ 全薬工業の関与についての方針決定
平成16年8月20日,E,G,L,I,J,C,Bのほか,全薬工業の社員も出席しての開発会議が行われ,本件共同研究の進捗状況について,J,G,Bらから報告が行われた(甲27)。また,引き続き内部的な会議も行われ,Eから,全薬工業との交渉状況に関し,大学及び個人の権利の確認や,ロイヤリティなどの話があった。
もっとも,その後,全薬工業は,本件共同研究については原告や鳥取大学が関与しているため,全薬工業が特許権を完全に掌握できないという理由で,本件共同研究への資金提供を行わないことになった。
ク G らによるマウス抗体の作製と測定
平成16年9月12日までに,G は,自ら作製した19種類のマウス抗体(1 09,1 12~1 K K K14,1K17の各シリーズ)と,L が作製した2種類のマウス抗体(12E11,9C10)の合計21種類のマウス抗体のうち,培養上清から精製した19種類を,蛍光遠心法による測定のため,Bに送付した。
また,G は,上記精製マウス抗体について,同月13日に,グルタルアルデヒドによる固定を行わないCell ELISAによる測定を行い,同年10月2日から7日にかけて,Raji 細胞を用いた生育阻害の測定を行った。
ケ 測定結果の報告とマウス抗体の選抜
平成16年10月9日,E,C,G,B,N,L,K,Jらの出席の下,開発会議が行われた。
Eからは,特殊免疫研究所のFが被告の取締役に加わること,全薬工業との関係が従来のものから変更になったこと,他社(シミック)との提携・契約を検討中であることなどが報告された。
また,前記クのマウス抗体について,G から,Cell ELISA による結合親和性及び競合反応の測定結果と生育阻害の測定結果が,L から,アポトーシスの測定結果が,Kから,DNA 配列(シークエンス)の解析結果が,Jから,蛍光遠心法による結合親和性の測定結果が,それぞれ報告された。そして,これらに基づく検討の結果,前記クの21種類のマウス抗体のうち,実験を進める抗体として,1K0911,1K0924,1K1228,1K1257,1K1402,1K1422,1K1712,1K1791の8種類が選抜された(甲40の1・2,乙35の1~5)。もっとも,この時点で,1K17シリーズについて,蛍光遠心法による結合親和性の測定は行われていなかった。
コ Bによるマウス抗体(キメラ化候補抗体)の選別
平成16年11月1日,Bは,Cから,早急にBと話合いをしてキメラ化抗体の候補を絞るよう,Dの指示があったと連絡を受けた。
同月5日,Bは,上記開発会議後に行われた蛍光遠心法による結合親和性測定の結果もふまえた上で,キメラ化の候補として,前記クの21種類のマウス抗体の中から,生育阻害があるもの,結合親和性が高いもの,サブクラスが異なるものを,各免疫法から1つ以上選択し,ほぼ同等の性質のものは削除した結果,前記クの対案として,1K0924,1K1228,1K1257,1K1402,1K1422,1K1712,1K1736,1K1791の8種類を改めて選抜し,その結果をCらに報告した。
サ キメラ化候補抗体の最終選考
平成16年11月8日,D,E,C,G,B,N,L,Jらの出席の下,開発会議が行われた。
EやDからは,シミックが参加することに合意したこと,シミックへ開発計画を明示すること,全薬工業とは以前のような関係・契約はないが,何らかの形で関係継続の可能性があることなどが報告された。
そして,キメラ化候補抗体の選考が正式に行われ,Bが事前に選んだ上記8種類のマウス抗体のうち,1K1257は,1K1228とアミノ酸配列が近いため,キメラ化候補から外し,1K1782をキメラ化候補に加えることが決定され,本件マウス抗体8種類が最終的に選抜された。本件マウス抗体は,① リツキサンと類似するものとして,生育阻害があり,結合親和性が2B8と同程度のもの(1K0924,1K1422,1K1791),② リツキサンとは結合パターンの異なる高親和性抗体として,ⓐ 生育阻害はないが,結合親和性が2B8より強く,Cell ELISA で競合反応があるもの(1K1712),ⓑ 生育阻害はないが,結合親和性が2B8より強いもの(1K1228,1K1402,1K1736,1K1782)に分類されていた。
その後,本件マウス抗体のうち,1K1791及び1K1782がヒト化されることになり(甲41の1・2),同年12月2日,M に対し,ヒト化抗体のデザインが依頼された。
シ 出願についての協議
(ア) 平成16年12月8日,Dは,B,C,Eに対し,CD20関連の出願として,① 本件マウス抗体全部と,そのキメラ抗体(つなぎ合わせるヒト定常域配列を明記)及びヒト化抗体(以下「出願候補①」という。),② 抗体作製方法及び効果的なスクリーニング法(以下「出願候補②」という。)の2つを出願するつもりであることを伝えた。さらに,同月13日,Dは,E,A,B,Cに対し,
出願候補①について,出願人を被告にすることは既定のことと思うが,発明者を決定しなければならないとして,発明者を誰にするか意見を求めた。
これに対し,Eは,アイデアを出し,実作業を行ったかテクニシャンに行わせた研究者とすべきであると返答し,Bは,研究者が発明者に入り,出願は原告と被告との共同出願となり,権利行使に関しては別途協議となると返答した。
しかしながら,Dは,Bに対し,原告の知的財産本部は,権利配分についての合理的見解を持てず,出願関係者の状況を的確に評価して出願を管理・メンテナンスする能力を有しているとは考えられないとして,出願候補①については,被告単独出願とし,発明者はE(又はJを追加)とすること,出願候補②については,被告と原告との共同出願(場合によっては原告の単独出願)とし,発明者は被告,原告,鳥取大学の関係者とするのが妥当であるとの見解を示した。
(イ) 平成17年2月ころ,Dは,Eに対し,被告の役員としてFとHを予定していることを伝えたところ,同月末ころから,Eは,被告の業務には関与しなくなり,同年4月6日に被告の代表取締役を辞任した。
同年3月1日,Bは,約半年間の留学のため,渡英した。
(ウ) 平成17年3月19日,H は,G に対し,特許出願について,原告及び鳥取大学との権利関係があることから,出願候補②については両大学の共有成果とすること,出願候補①については,被告単独の成果であることで既に合意されていると理解しており,事業化された場合に,相手方との交渉や,将来的なロイヤリティ収入に関して大きな影響を与えるので,上記の構成で出願しておくことが被告にとって最も有利であることを電子メールで伝え,同一のメールを,Bら研究担当者に対しても,cc 送信した。
(エ) 平成17年3月25日,E,F,I,C,G,一時帰国したB,H,Jの出席の下,開発会議が行われた。
そして,出願候補②は原告と鳥取大学との共同出願,出願候補①は被告単独出願として,いずれも同月29日に特許出願することが報告され,Bからは,本件マウス抗体のキメラ化・ヒト化について,進捗状況が報告された。
ス 特許出願(三者出願,被告出願1)
平成17年3月31日,H は,出願候補①及び②の出願を依頼していた特許事務所に対し,明細書の最終案を電子メールで送信し,同一のメールを,Bら研究担当者に対しても,cc 送信した。
そして,同日,出願候補①について,被告のみを出願人として,出願候補②について,原告,被告,鳥取大学を共同出願人として,それぞれ特許出願が行われた。
このうち出願候補①に係る出願が,被告出願1である。
また,出願候補②に係る出願が,三者出願であり,出願にあたっては,同月30日,三者間で,特許共同出願契約が締結された。
セ その後の研究開発(1K1791への絞り込み)
(ア) 平成17年5月10日,本件共同研究について,H による開発タイムラインの進捗状況総括と変更に係る報告,B及びJによる評価試験(アポトーシス試験,ADCC 試験,CDC 試験)に関する報告,Cによるキメラ抗体の準備状況及びヒト化抗体の開発状況に関する報告,出席者による討議などを行う予定で,F,G,C,一時帰国したB,J,H の出席の下,開発会議が行われた。
(イ) 平成17年7月6日,G,一時帰国したB,F,C,K,Jの出席の下,開発会議が行われた。
C及びKからは,本件マウス抗体のキメラ化の状況と,1K1791及び1K1782のヒト化の状況が,G からはキメラ抗体のCell ELISA による試験結果が,B及びJからは,キメラ抗体の蛍光遠心法による結合親和性試験結果と,愛知県がんセンターにおけるCDC 試験とADCC 試験の結果などが,それぞれ報告された。
そして,キメラ抗体に評価すべき材料がなかった1K1782のヒト化は行われないこととなり,以後は,1K1791のヒト化のみが進められた。
ソ 本件共同研究中止の申入れと交渉
(ア) 平成17年9月7日付けの文書で,被告は,Aらに対し,本件共同研究を中止し,同月末で清算をしたいとの通知をした。
(イ) その後,双方は,弁護士を通じ,交渉を始めたが(被告の代理人弁護士は途中で交代した。),原告は,本件共同研究の継続,被告出願1の共有化を求め,被告は,本件共同契約の中止,細胞,抗体等の引渡を求め,平行線を辿った。
タ その後の特許出願
次のとおり,双方から,特許出願が行われた(前提事実(8)~(10))。
平成17年12月28日被告出願2
平成18年3月7日原告出願1
平成18年3月31日被告出願3
平成18年7月6日原告出願2
(2) 発明者となるべき者
ア 発明者
「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項),特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(同法70条1項)。
したがって,発明者(共同発明者)とは,特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想について,その創作行為に現実に加担した者ということになる。また,現実に加担することが必要であるから,具体的着想を示さずに,当該創作行為について,単なるアイデアや研究テーマを与えたり,補助,助言,資金の提供,命令を下すなどの行為をしたのみでは,発明者ということはできない。
以下,本件について検討する。
イ 特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想の創作行為部分
(ア) 特許請求の範囲の記載
被告出願3に係る特許請求の範囲は,別紙出願目録1記載(3)のとおりである。
そして,本件マウス抗体は,第1の態様の抗体と,第2の態様の抗体とにグループ分けされており(被告出願3の願書に添付された明細書の段落【0014】,【0021】。以下,段落は上記明細書のものを指す。),前者の実施例として,請求項2において,配列番号で特定された,1K1422(配列番号1及び7),1K1791(配列番号2及び8),1K0924(配列番号15及び17)が,後者の実施例として,請求項10において,配列番号で特定された,1K1712(配列番号3及び9),1K1402(配列番号4及び10),1K1736(配列番号5及び11),1K1782(配列番号6及び12),1K1228(配列番号16及び18)が,それぞれクレームされている(1K1782は,補正により削除されている。)。さらに,上記第1及び第2の各態様ごとに,本件マウス抗体のキメラ抗体及びヒト化抗体がクレームされ(請求項4及び5,12及び13),ヒト化抗体の実施例として,本件マウス抗体のうち1K1791のヒト化抗体が,配列番号で特定されてクレームされている(請求項6)。
(イ) 技術的思想の創作行為部分
a マウス抗体
本件発明は,その名称が「抗CD20モノクローナル抗体」であり,同発明に係る特許出願の願書に添付された明細書には,次の記載がある。
「本発明の課題は,従来の抗CD20モノクローナル抗体治療薬よりも優れた生物学的機能を有するモノクローナル抗体を提供することである。」(段落【0007】)
「本発明者らは,複数のCD20抗原陽性B細胞株,遺伝子工学的にヒトCD20抗原を細胞膜上の発現させた哺乳動物細胞,及びGST(glutathione S-transferase)タンパクを融合させたヒトCD20タンパクを免疫原として任意に組み合わせて用いることによりヒトCD20抗原に対して特異的に結合するマウス由来抗CD20モノクローナル抗体を得た。このうちいくつかはエフェクター細胞非存在下のin vitro CD20発現細胞培養においてアポトーシス誘導を含む直接的な細胞増殖阻害活性を有していた。また,アポトーシス誘導などの細胞増殖阻害活性の有無に拘わらず,他の選択されたマウス由来抗CD20モノクローナル抗体も含め,キメラ化により効果的な補体又は抗体依存性の細胞障害活性を有した。これらの中から最も望ましい生物学的活性を有すると判断された抗体のアミノ酸配列をヒト化することにより治療薬として使用できる抗CD20モノクローナル抗体が作製された。これにより,本発明は完成された。」(【0008】)
これによると,本件発明に係る一連の創作過程は本件マウス抗体の取得により始まるものであり,本件マウス抗体は,本件発明に係る技術的思想の実現に不可欠なものといえる。
したがって,本件マウス抗体の作製は,本件発明の創作行為の中核部分と認められる。
b キメラ抗体
キメラ抗体は,マウス抗体の遺伝子を組み換えたものであり,そのオリジナルは本件マウス抗体である(段落【0014】)。
また,キメラ化の作業そのものは,被告出願3当時,既にルーティン作業の1つであったと考えられる(弁論の全趣旨)。
したがって,本件マウス抗体をキメラ化した抗体の作製だけでは,本件発明の創作行為とは認められない。
c ヒト化抗体
ヒト化抗体は,キメラ抗体と同様,そのオリジナルはマウス抗体である(段落【0014】)。
しかしながら,ヒト化の作業は,本件でもわざわざM にデザインを依頼しているように(前提事実(4)ウ,前記(1)サ),高度な技術が必要なものであったといえる。
したがって,実際にデザイン・作製がされ,実施例となった1K1791のヒト化抗体の作製は,本件発明の創作行為の中核部分と認められる。
(ウ) 以上のとおりであるから,本件において発明者性を検討すべき創作行為は,本件マウス抗体(キメラ化候補抗体)の作製と,マウス抗体1K1791のヒト化抗体の作製であるということになる。
ウ 創作行為への現実的な加担
(ア) マウス抗体について
マウス抗体は,マウスに抗原を注射するという定型的な作業により得られるものではあるが,特定の条件で免疫を行えば,必ず希望する抗体が得られるというものではない。本件マウス抗体も,生物であるマウスが,人為的な操作の及ばない場面において,他の多くの抗体と共に,偶然生み出したものである。
しかも,本件マウス抗体は,抗体医薬品となることが期待されるものではあるが,マウス抗体の段階では,将来において抗体医薬品となった場合の有用性(CDC 活性,ADCC 活性,アポトーシス誘導能)のうち,CDC 活性及びADCC活性の有無は確認することができない。また,アポトーシス誘導能も,マウス細胞に対する効果であって,ヒトの細胞に対し同様の効果を発揮するかは不明である。
そのため,マウス抗体の発明においては,どのようなマウス抗体が医薬品となった場合に有用性を発揮することが期待されるものであるかについて,専門的知見を下に一定の基準を定め,これに基づいて抗体を効率よく選抜していかざるを得ない(漫然と抗体を作製しても,求める抗体の作製につながるとはいえない。)。
したがって,本件のような抗体発明においては,上記のような抗体の取得に向けた作業の方向性の示唆,有望な抗体を選抜するための測定方法の工夫や,選抜基準の設定などが重要となってくるのであり,これらの行為の方が,創作行為への現実的な加担といえる行為としては,直接的な貢献であるとはいえ幸運によるところが大きい抗体の取得そのもの(これがG により行われたことは争いがない。)よりも,貢献度が高いというべきである。
(イ) ヒト化抗体について
ヒト化抗体は,マウス抗体の遺伝子を組み換えたものであるから,当該マウス抗体の取得及び選抜と,前記イ(イ)のとおり高度な技術が要求されるデザインは,創作行為といえる。
他方,ヒト化抗体の作製作業(遺伝子組換作業)そのものは,デザインを実現する作業であって,創作行為とは認めがたい。
エ このように,本件発明においては,発明の技術的思想の創作行為への現実的な加担といえる行為が複数考えられる上,複数の者が関与した本件共同研究の過程において創出されたものであるため,この複数の者のうち誰が発明者となるかについて,以下検討する。
(3) 本件共同研究の過程において各人が果たした役割
アマウス抗体について
(ア) 抗体作製
a B
前記(1)で認定のとおり,抗CD20モノクローナル抗体の研究は,平成15年5月ころから,大阪市立大学において開始されたところ,C,B,G,L は,これに当初から携わっている。そして,タンパク質を専門とするBは,Cが抗原として用いていた,大腸菌を用いたCD20-GST が,その立体構造の観点から不適切であることを指摘しており,Bの指摘に基づき,抗原としてCD20/CHO 細胞を用いられるようになって以降,本件マウス抗体を含む,CD20結合性を有するマウス抗体が多く得られるようになったものである。したがって,Bの示唆した作業の方向性は,本件発明に寄与したといえる。
この点について,被告は,功を奏したのは,G が行った組み合わせ免疫,特に,最終免疫にRaji 細胞を使用したことであると主張するが,組み合わせ免疫は,CD20/CHO 細胞を使用しない場合にも行われていたものの(1K10,1K11,1K18,1K20の各シリーズ),CD20結合性のある抗体は得られていない。また,最終免疫にRaji 細胞を使用した2シリーズのうち,CD20/CHO 細胞を使用していない1K18シリーズにおいても,やはりCD20結合性のある抗体は得られていない。したがって,作業の方向性として有効であったのは,CD20/CHO 細胞の使
用であったと認められる。
確かに,多種多様な抗原での免疫を試みることは,免疫作業にあたり一般的に行われるであろう範囲の工夫といえるし,CD20/CHO 細胞の使用自体も,とりたてて目新しいものではない。しかしながら,本件では,上記のとおりCD20/CHO 細胞の使用が貢献したことは明白であり,これを現実的な加担として評価できるのであって,工夫の程度は,貢献の割合において考慮すべき事情というべきである。
b G
G は,具体的な免疫条件の下で作業を行い,本件マウス抗体を取得したのであり,これは直接的な貢献といえる。原告も,G の貢献があったこと自体は否定していない。
しかしながら,免疫条件の選択・組み合わせについて試行錯誤を試みることは,免疫作業にあたり一般的に行われるであろう範囲の工夫といえるから,G の寄与のみを大きく評価することはできない。被告は,希有なマウス抗体を現実に得ることができたのは,長年にわたり抗体作製を行ってきたG が,経験に基づき幸運を引き寄せたからであると主張するが,幸運を引き寄せる要因となったという免疫条件は,最終免疫にRaji 細胞を使用したこと以外には具体的に明らかにされていない。そして,最終免疫にRaji 細胞を使用したことが功を奏したとは認めがたいことは,前記aで述べたとおりである。
c C
CによるCD20/CHO 細胞の作製は,Bの発案を定型的な作業により実現したに過ぎないといえ,創作性のある行為とは認められない。
(イ) スクリーニング
G は,自ら作製したマウス抗体について,Cell ELISA によるスクリーニングを行い,これにより19種類のマウス抗体が選抜されているところ,本件マウス抗体は,いずれもこの中から選抜されたものである。
しかしながら,Cell ELISAによるスクリーニングは,公知の方法によるものであって,一般的には,創作行為であるとはいいがたい。
(ウ) 本件マウス抗体の選抜
被告は,上記19種類のマウス抗体のうち,本件マウス抗体以外のものについても有用性は否定されず,19種類の中から8種類を選抜することは発明行為ではないから,前記(イ)の時点で発明は完成したと主張する。しかしながら,実際には,本件マウス抗体8種類のみが被告出願3の対象とされたのであり,前記(2)イのとおり,本件発明の中核部分を構成するマウス抗体は本件マウス抗体のみであるから,その選抜は創作行為であるといえる。したがって,本件では,本件マウス抗体の選抜についての寄与を検討すべきである。
a 測定にあたっての寄与
前記(1)で認定のとおり,本件マウス抗体の選抜は,開発会議における話合いにより行われたものであるが,その際に検討された要素は,21種類のマウス抗体(G が作製した19種類のマウス抗体及びL が作製した2種類のマウス抗体)について測定・解析された,アポトーシス(測定担当L。),DNA 配列(解析担当K。),Cell ELISA による結合親和性及び競合反応(測定担当G),生育阻害(測定担当G),蛍光遠心法による結合親和性(測定担当B)である。
そして,選抜にあたりどのような要素を検討するかについては,リツキサンより優れた薬効を有する抗体医薬品の開発という本件共同研究の目的に沿ったものとなることは当然であるところ,抗体医薬品である以上,抗原との結合親和性が要求されるし,生物活性のうち,マウス抗体段階で測定できるのはアポトーシスと生育阻害だけである。また,DNA 配列の解析は,同一の抗体を除外するために当然必要となる作業である。したがって,上記21種類のマウス抗体について,結合親和性及び2B8との競合反応,アポトーシス,生育阻害,DNA 配列などを,一般的な方法で測定あるいは解析することは,開発にあたり通常行われるべき作業といえ,創作行為とは認めがたい。
しかしながら,蛍光遠心法による結合親和性の測定は,本件共同研究にあたってBが新たに開発・提案したものであるし,RI 標識法による解離定数測定が不奏効であった本件においては,これに替わる解離定数測定方法として,重要な工夫であったといえる。
b 選抜にあたっての寄与
平成16年10月9日の開発会議では,実験を進める抗体について話合いがされ,一応の選抜がされたものの,正式な選抜は,同時点では未了であった蛍光遠心法による測定結果が追加された後の同年11月8日に行われており(前記(1)ケ,コ,サ),蛍光遠心法による測定結果が選抜基準となっていたことが窺われる。
また,正式に選抜された本件マウス抗体は,① 生育阻害があり,結合親和性が2B8と同程度のもの(第1の態様:前記(2)イ(ア))と,② 生育阻害はないが,結合親和性が2B8より強いもの(第2の態様:前記(2)イ(ア))に分類されている。そして,2B8の結合親和性は,Cell ELISA 及び蛍光遠心法のいずれにおいても1と価されている(甲38の2)。
ところが,上記①のマウス抗体の結合親和性は,Cell ELISA による測定では,-1,0,1と評価が分かれており,蛍光遠心法による測定では,いずれも1と評価されているから,結合親和性が2B8と同程度といえるのは,後者の測定による評価である。また,上記②のマウス抗体の結合親和性は,Cell ELISAによる測定では,いずれも1と評価され,蛍光遠心法による測定では,いずれも2と評価されているから,結合親和性が2B8より強いといえるのは,やはり後者の測定による評価である(甲38の2)。
したがって,ここにいう結合親和性は,Cell ELISA による結合親和性ではなく,蛍光遠心法による結合親和性であると認められ,蛍光遠心法による測定の値は,本件発明において,具体的な選抜の基準として採用されたといえる。
c 被告の主張について
(a) 解離定数の貢献について
被告は,被告出願3では,解離定数による数値限定がされていないから,Bの貢献はないと主張する。
しかしながら,被告出願3(補正前)において,本件マウス抗体は,請求項2に記載のもの(1K1422,1K1791,1K0924)と,請求項10に記載のもの(1K1712,1K1402,1K1736,1K1782,1K1228。ただし,1K1782については,補正により削除された。)に分類されてクレームされているところ(前提事実(10)),これは,本件マウス抗体の選抜にあたって行われたものと同じグループ分けである。そして,このグループ分けが,蛍光遠心法による結合親和性の測定値を基準に行われたことは,前記bのとおりである。
したがって,Bの開発した蛍光遠心法による測定結果は,本マウス抗体の出願の内容をなしているといえ,解離定数による数値限定がないからといって,Bの貢献を否定することはできない。
(b) 蛍光遠心法の信頼性について
被告は,蛍光遠心法の結果は信頼できるものではなかったと主張する。そして,蛍光遠心法による解離定数の測定は,本件マウス抗体の選抜にあたって2回行われているところ,その測定が,1回目と2回目とで大きく異なるものも存在する。
しかしながら,本件マウス抗体の選抜において,上記解離定数の測定結果は,具体的な測定値としてではなく,2B8と比較した相対的な値として利用されたのであって,その限度においては,信頼できるものであったといえる。
そして,本件マウス抗体は,上記相対的な値によるグループ分けで,本件特許の請求の範囲を構成しているのであるから,具体的な数値の信頼性により,本件マウス抗体の選抜に対する貢献が否定されるものではない。
イ ヒト化抗体について
(ア) ヒト化する抗体の選抜
前記(2)イのとおり,発明者性を検討すべきは,本件マウス抗体のうち1K1791のヒト化抗体であるところ,前記(1)で認定したとおり,本件共同研究の過程においては,本件マウス抗体のうち1K1791と1K1782がヒト化の対象とされ,さらにその後,1K1791のみのヒト化が進められている。
また,上記2種類のマウス抗体がヒト化の対象とされた理由については,1K1791は,蛍光遠心法による結合親和性が2B8より高いことと(解離定数Kd 値の平均値が1.695で,2B8の平均値6.785より低く,結合親和性は高い。),アポトーシス誘導能が最も高いことが決め手となったとされている。
すなわち,前記ア(ウ)のとおり,Cell ELISA法によっては,1K1791は,結合親和性が低いと判断され,本来であれば本件マウス抗体(キメラ化,ヒト化候補)には選抜されなかったところ,Bが開発した蛍光遠心法による測定方法により,結合親和性が2B8より高いと判断され,21種類の選抜結果に残り(大きな分類としては,結合親和性は2B8と同程度のものと分類されるが,前述したとおり,数値の上では,2B8より結合親和性測定値は高い。),その後のアポトーシス測定において最も高い数値を示した抗体であるため,1K1782とともにヒト化候補に選抜された。
一方,アポトーシス測定自体には,従来からある測定方法を実施するに過ぎず,創作行為ということはできない。
そうすると,ヒト化する抗体の選抜についても,キメラ化候補抗体の選抜と同様,Bの開発した蛍光遠心法による結合親和性測定が寄与したということができる。
(イ) デザイン
ヒト化にあたってのデザインは,専門家に依頼することが必要な,ヒト化の成功を左右するものであったといえるから,これを行ったM の創作行為といえる。
鑑定書には,上記デザインについて,ヒト化抗体の構築を考える同業者が考え得る配列であるとの指摘があるが,単に考え得るというだけでは創作行為であることは否定されないし,2種類のマウス抗体について,それぞれ16種類のデザインが行われていることからも,ヒト化のデザインについては,普遍的なデザインが存在するわけではなく,適切なデザインを行うために試行錯誤が必要な,創作性を要する作業であったと考えられる。
(ウ) 測定
ヒト化抗体のCDC 活性やADCC 活性の測定は,ヒト化が成功したかどうかを後から確認する作業に過ぎず,創作行為ということはできない。
確かに,ヒト化抗体については,マウス抗体段階では測定できないCDC 活性やADCC 活性を測定することが重要であるが,作製された抗体を既知の方法で測定することは,誰が行っても同じ結果が得られる定型的な作業に過ぎないといえる。
(4) 出願に係る双方の態度
ア 被告側
前記(1)で認定したとおり,被告は,本件共同研究について,全薬工業からの資金提供を期待していたものの,平成16年10月ころまでには,原告や鳥取大学の関与のため特許権を完全に掌握できないという理由で,資金提供を断られている。
そして,被告は,被告出願1に際し,出願候補①を被告の単独出願とすることを当然の前提としているところ,その理由について,Dは,原告に,権利配分に係る見解や,知的財産権管理能力が欠けることを挙げ,H は,事業化された場合に,被告にとって有利であることを挙げている。
これらのことからすれば,被告は,出願にあたり,経済面あるいは経営面における被告のメリットを重視するあまり,真の発明者が誰かという客観的な事実に基づいて出願を行ったとはいいがたい。
イ 原告側
前記(1)で認定したとおり,被告出願1に際し,Bは,出願候補①について,研究者が発明者に入り,出願は原告と被告との共同出願となると主張していたものの,被告から拒絶され,さらに,被告単独出願となることや,J及びG が発明者となることについて,開発会議の場やcc送信されたメールで知らされた後も,特段の異議を述べていない。
しかしながら,誰を出願人あるいは発明者とするかは,本来,原告に所属する一研究者に過ぎず,特許を受ける権利を有しないBの拘泥するところではなかったといえる。また,Bは,平成17年3月から留学のため渡英しており,上記開発会議にも,一時帰国して参加していたのであって,出願内容について十分に関与するだけの状況にもなかったといえる。
したがって,上記のようなBの態度のみを理由として,原告が,被告出願1を被告の単独出願とすることについて承諾していたとか,本件マウス抗体について被告単独の発明とすることに同意していたとみることは困難である。
なお,三者出願に際しては,特許共同出願契約が締結されているが,仮に,原告が,被告に対し,特許を受ける権利を譲渡するなどして,被告の単独出願を承諾するようなことがあれば,三者出願の際と同じような契約が締結されるはずであるが,そのような契約が締結されたという事情は窺えない。
(5) 本件発明の発明者及び寄与の割合
以上のことからすれば,本件発明の発明者は,本件マウス抗体についてはBとG であり,1K1791のヒト化抗体については,B,G,M と認められる。
また,Bの特許を受ける権利は,発明規程に基づき,原告に帰属したものと認められ,G 及びM の特許を受ける権利は,委託料を支払って被告が取得したものと認められる。
そして,前記(3)で認定した,本件発明に係るB,G,M の寄与を,本件発明全体に占める貢献度の割合として算定すれば,本件発明に係る特許を受ける権利の共有持分は,原告が3分の2,被告が3分の1と認める。
なお,本件契約条項14条3項では,「原告又は被告に属する研究担当者が,共同研究の結果,共同して知的財産の創作を行い,当該創作に係る知的財産権の出願等を行おうとするときは,当該知的財産権に係る持分を協議して定めた上で,共同して出願等を行う。」と定められているが(前提事実(2)ア),協議をすることができなかった以上(前記(1)シ以下),上記のとおり認めるのが相当である。
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