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2009年11月23日 (月曜日)

サイバー冷戦(Cyber Cold War)

「冷戦」は過去のものかと思ったら,そうではないらしい。「サイバー冷戦(Cyber Cold War)」なる言葉が生み出された。もしかすると,過去の「冷戦」よりももっと冷戦かもしれない。下記の記事が出ている。

 Report: Countries prepping for cyberwar
 CNN: November 17, 2009
 http://www.cnn.com/2009/TECH/11/17/cnet.cyberwar.internet/

 China steps up cyberwar, US commission warns
 Computer Weekly: 20 November 2009
 http://www.computerweekly.com/Articles/2009/11/20/239399/china-steps-up-cyberwar-us-commission-warns.htm

日本には,平和憲法がある。終戦後のGHQやその他の団体・組織などによる徹底した教育活動の結果,戦争の意欲のある若者はほとんどいない(←いたとしても,日本全国でみれば例外的存在だ。)。そして,大半の日本人は,「戦争」というものに非常に鈍感になってしまった。

おそらく,「日本が戦場になる」ということを本気で想定できる若者は相当少ないだろうと推測する。

しかし,現実に,日本の通信網は既に戦場の一部となっている。サイバー空間には国境がないのと同じことで,サイバー戦争の戦場にも国境など存在しない。物理的に限定された戦場もない。だから,「物理的戦場が存在すること」を想定した戦略や戦術等の大半が役にたたなくなってしまっている。加えて,そこでは,職業軍人と民兵とゲリラと一般市民の区別は全くない。

事実は事実だし,今後ずっとそうだろうと思う。

国政の面でもビジネスの設計の面でも,「インターネットは平和だ」ということを前提に,「インターネット上では常に通信接続が確保できる」と思い込んで将来予測をすれば,100パーセント間違いなく失敗することになるだろう。

また,以前にも書いたことだけれども,法律家は,平時と戦時が永続的に混在し続ける状況を前提に全ての法理論を再構築する必要がある。

現代人は,そのような「壮絶な空間の中で生きている」という自覚をしっかりともつべきだと信ずる。

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コメント

高橋 先生

夏井です。

社会統制の組織化という側面において,複数の異なるプロトコルが同一の「場」に同時に存在し何らかの機能を実現している状態における処理の問題のことを言っています。

一般に,普通の人間の脳は複数の異なる大量のタスクをそれぞれ全く異なるプロトコルに依拠して並列処理するのには向いていないので,なかなか想像しにくいかもしれませんが,モデルを構築することはできます。

ただ,そのモデルに基づく検討の結果から得られる解が人間(またはその組織)によって実行可能なものかどうかというところが難しいわけです。たぶん,無理です。

というわけで,現実には破綻または崩壊という現象が発生するかもしれません。対処すべき現象のほうが人間の処理能力をはるかに超えてしまっているので,そういうことになります。

投稿: 夏井高人 | 2009年11月26日 (木曜日) 13時21分

>異なるプロトコルを切り替えるためのパラメータ設計の問題なんだろうと勝手に想像しています。

私は、ゲリラ戦の防衛戦略をサイバーに置き換えるためのアイディアを考えています。(DoDのFM31-21の分析を来年あたりしようかと)

そして、うまくいかないのは、ミリタリとサイバーのカルチャア・ギャップが最大の問題だろうと踏んでいます。

投稿: 高橋郁夫 | 2009年11月25日 (水曜日) 14時16分

高橋先生

コメント及びリンクありがとうございます。

本日は大学の講義等があるので,明日以降にじっくりと読んでみようと思います。

平時の法と戦時の法とが混在して執行されなければならない状況の下で,国の組織がそれに対応しているかというとまったく対応していないし,様々なマネジメントシステムがちゃんと機能するかというとぜんぜんあてにならないし,そもそも国民の意識が現実から相当かけ離れてしまっているので,なかなな難しいですね。そして,予算となると悲観的または絶望的にしかなれないような状況が続いています。

要は,異なるプロトコルを切り替えるためのパラメータ設計の問題なんだろうと勝手に想像しています。私は,そのような切り口からもうしばらく研究を進めてみようと思っています。

投稿: 夏井高人 | 2009年11月25日 (水曜日) 14時00分

サイバー紛争と法的問題に関する研究

http://www.itresearchart.biz/ref/index.htm

をあげておきました。
ご参考まで。

投稿: 高橋郁夫 | 2009年11月25日 (水曜日) 13時44分

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