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2009年10月19日 (月曜日)

服役囚等の管理のためのRFIDタグの応用

下記の記事が出ている。

 RFID A Solution For Lost DNA Samples
 RFID Solution Online: 09/24/2009
 http://www.rfidsolutionsonline.com/download.mvc/RFID-A-Solution-For-Lost-DNA-Samples-0001

要するに,DNAデータをデータベースで照合して服役囚等の同一性識別をしようとしても,うまくいかないことがあるということが次第に判明してきたということで,その問題を解決するためにRFIDタグの応用が考えられているようだ。

DNAデータは,一卵性双生児やクローン人間では最初から識別の機能を持っていない。そこまでいかなくても非常に似た遺伝子組成を有する者は結構多数存在する。よく知られたことだが,DNAデータによる識別は,あくまでも確率論の世界の問題であって,一義的明確に完全に識別できる保障は最初からない。これは,ホモ・サピエンスという同一の「種」に属する生態について,非常に微細な個体差のレベルでの識別をしようとするのである限り,避けることができないことだ。したがって,足利事件でも明らかになったとおり,冤罪事件も発生し得ることになる。

まして,DNAサンプルデータが何らかの理由により失われてしまった場合またはデータの一部に欠損等が生じた場合には,同一性識別のためのデータの対照ができなくなってしまうので,識別機能が完全に失われてしまうことになる。

では,RFIDタグを応用すれば,そのような事態が改善されることになるのだろうか?

RFIDタグによる識別は,人為的に決定された符号等の情報を小さな電子タグに記録して実行されものだ。それゆえ,人為的に生成されたデータである以上,誰かによって同一のデータが人為的に生成(模造)される可能性は常に存在していることになる。したがって,今度は偽造または変造されたRFIDタグによる偽装に悩まされ続けることになるだろう。

ということになりそうなのだが,よく考えてみると,そもそも「完全な識別」とは一体どういうことを意味するのか?そして,それは本当に可能なことなのか?

そのような基本的な問題について考え続けている法律系の研究者は,たぶん私くらいしかいないだろうと思う。現実には,「頭が悪いからそんな自明なことが判らないのだ」と嘲笑されることが珍しくない。でも,それはそれで全然かまわないと思ってきたし,そもそもあまり気にならない。もしかすると,「不感症」の一種なのかもしれない。(笑)

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