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2009年10月 6日 (火曜日)

任天堂がマジコンを輸入・販売する会社を提訴

任天堂は,ニンテンドーDS上で作動するゲームソフトの違法コピーを利用可能とするために用いられるマジコンと呼ばれる装置を輸入・販売する会社に対し,不正競争防止法に基づき差止仮処分請求をしていたが,新たに損害賠償請求訴訟を提起したようだ。

 任天堂:「マジコン」販売4社を損賠提訴 4億円請求
 毎日jp: 2009年10月5日
 http://mainichi.jp/select/biz/news/20091006k0000m040047000c.html

 任天堂らがマジコン業者に4億円の損害賠償訴訟、通報窓口も開設
 Internet Watch: 2009/10/5
 http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091005_319712.html

この損害賠償請求訴訟は,不正競争防止法に基づいて提起されたものとして報道されている。

ところで,不正競争防止法3条には損害賠償請求をすることができると規定されており,関連解説書等を読んでみると,あたかも3条の規定によって請求権が発生するかのような解説がなされている。しかし,3条は民法709条の特則に過ぎず,法理論的に意味があるのは3条但し書きの部分と15条の除斥期間の規定の適用だけれある。つまり,請求権は競合しているのではなく,あくまでも不法行為に基づく損害賠償請求権だけが存在し,それが一定の場合に請求権不発生となったり(3条但し書き),短期間で権利消滅したり(15条)だけのことに過ぎない(なお,民法709条の不法行為として損害賠償請求がなされている場合であっても,被告は不正競争防止法15条の除斥期間の経過を抗弁事由として主張することができると解される。)。

このことは,仮に不正競争防止法3条の規定が存在しないとしても,営業秘密の侵害行為があれば民法709条によって常に損害賠償請求訴訟を提起することができるという当然の解釈論を理解すれば,誰にでも非常に簡単に理解できることだ。

あくまでも一般論だが,知的財産権関係の領域を専門として標榜している法律家の中には民法の解釈論や要件事実論に精通していない者があり,誤った解説をしていることがあるし,判決の中にも安易に不正競争防止法3条から請求権が発生するかのような理由を書いているものがあるので注意を要する。


[参考:不正競争防止法抜粋]

第二条(定義)
 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
十  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
8  この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。

第三条(差止請求権)
 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

第四条(損害賠償)
 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

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