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2009年10月30日 (金曜日)

カナダ:著作権法改正法案中の技術的保護手段の回避に関する条項は憲法違反との論文

日本国の著作権法にも「技術的保護手段の回避」があるが,同様の条項は世界の主要各国の著作権法の中にもある。これは,米国の「デジタルミレニアム著作権法」によってなされた大規模な著作権法改正に歩調を合わせてなされてきたものだ。この「技術的保護手段の回避」の禁止に関しては,これまでのところ,明確に「違憲」とする論文はなかったかもしれない(←勉強不足のため,私が知らないだけかもしれない。正確ではない。)。このことは,既に制定された法律の解釈でもそうだし,提案されている法案についてもそうだ。ところが,カナダの著作権法改正法(C.61)の解釈論として,違憲とする論文が公表されたらしい。その立論の当否はさておき,とても興味深い。

 Study Finds Canadian C-61 Anti-Circumvention Provisions Unconstitutional
 Michael Geist: October 27, 2009
 http://www.michaelgeist.ca/content/view/4489/125/

ちなみに,日本では,法学論文中で「違憲」との結論を書くと,何となく「素人解釈だ」との顰蹙を感ずることが多い。それだけ,「脳味噌が硬直化した学者が少なくない」ということの証左でもあるかどうかは判らないけれども,それにしても学問の縦割り構造がひどすぎ,また,研究者も全ての法領域に精通しようと日々努力し続けていないということによるところが大きいのだろうと想像している。

しかし,少なくともサイバー法の領域に関する限り,伝統的な日本流の「専門家」という概念は無意味であるだけではなく有害でもある。この領域において必要な人材とは,全ての法領域に精通し,どの領域についても正しく法解釈をすることができ,かつ,実務家としても研究者としても教育者としても積極的に行動できる人材だ。

[参考:日本国の著作権法条文]

第30条
1  著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,次に掲げる場合を除き,その使用する者が複製することができる。
一  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し,これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
二  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより,当該技術的保護手段によって防止される行為を可能とし,又は当該技術的保護手段によって抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり,又はその結果に障害が生じないようになつた複製を,その事実を知りながら行う場合
2  私的使用を目的として,デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であって政令で定めるものにより,当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は,相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

第119条
1  著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第30条第1項(第102条第1項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもって自ら著作物若しくは実演等の複製を行った者,第113条第3項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第4項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第120条の2第3号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行った者,第113条第5項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者又は次項第3号若しくは第4号に掲げる者を除く。)は,10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
2  次の各号のいずれかに該当する者は,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一  著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第113条第3項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)
二  営利を目的として,第30条第1項第1号に規定する自動複製機器を著作権,出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
三  第113条第1項の規定により著作権,出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者
四  第113条第2項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行った者

第120条の2
1 次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一  技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し,若しくは貸与し,公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもって製造し,輸入し,若しくは所持し,若しくは公衆の使用に供し,又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者
二  業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行った者
三  営利を目的として,第113条第3項の規定により著作者人格権,著作権,実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者
四  営利を目的として,第113条第5項の規定により著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者

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