現実世界だけではなく,インターネット上でも選挙関係のサイトや記事などが増えてきている。
ネット各社、衆院選の情報充実-マニフェスト比較など政治参加に一役
日刊工業新聞: 2009年08月14日
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0220090814agag.html
私自身は,特定の支持政党も支持候補者もないので,基本的にはどうでも良いことではあるのだが,ネット上の言論活動に関して韓国の研究者と意見公開をしたことが何年か前にあったので,それを思い出し,あちこちネットウォッチングをしてみた。
まず大原則は,言論の自由や思想・信条の自由あるいは政治的活動の自由は保障されなければならないので,誰がどのような立場で行う言論も原則として自由でなければならない。したがって,特定のサイトが自己の信ずる信条に従い,一定の政党や候補者に肩入れをした言論を展開することもまた自由でなければならない。もちろん,それに対する批判や反論も自由でなければならない。ただし,政治的に中立であり,利用者を公平に扱うと宣言しているISPなどではちょっと事情が異なる。あくまでも中立でなければならない。
ところが,現実の様子をいろいろと観て回ってみると,表面的には中立であると見せかけておりながら,実際にはそうではないところが結構たくさんあるようだ。例えば,中立であると宣言しているサイトでありながら,特定の政党等を支持する趣旨のコメントが一方的に削除されてしまうところなどが決して珍しくない存在となっているようだ。刑法上の詐欺罪には該当しないが欺瞞行為であることは疑いがない。
もしかすると,そのISPの経営者は中立であるべきだと信じているのにもかかわらず,従業員であるエンジニアが勝手な行動をしているのかもしれない。そのような場合には,当然,懲戒免職が相当だろう。
言論の自由は最大限保障されなければならない。しかし,中立でなければならない立場にある者(例:放送局は,放送法によって,「報道の公平」を保つべき義務がある。),法律上は中立であるべき義務を負っているとは言えないが,中立であると宣言している者については,言動一致が求められてしかるべきだろう。ISPについては,中立であると宣言しておきながら,実際にはそうでないとすれば,消費者保護上でも大きな問題が生ずるおそれがあると考える。
他方,公職選挙法が時代遅れのものであり,ひどく合理的でない条項を多数含んでいることは一応措くとして,現行法が一応正しいと前提した場合,もしかすると公職選挙法違反ではないかと思われるようなネット上の活動がいくつか目に付いた。一体どういうことになるのか,今後の動向に着目したいと思う。
[参考]
第148条(新聞紙,雑誌の報道及び評論等の自由)
1 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第138条の3の規定を除く。)は,新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が,選挙に関し,報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し,虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。
2 新聞紙又は雑誌の販売を業とする者は,前項に規定する新聞紙又は雑誌を,通常の方法(選挙運動の期間中及び選挙の当日において,定期購読者以外の者に対して頒布する新聞紙又は雑誌については,有償でする場合に限る。)で頒布し又は都道府県の選挙管理委員会の指定する場所に掲示することができる。
3 前二項の規定の適用について新聞紙又は雑誌とは,選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り,次に掲げるものをいう。ただし,点字新聞紙については,第一号ロの規定(同号ハ及び第二号中第一号ロに係る部分を含む。)は,適用しない。
一 次の条件を具備する新聞紙又は雑誌
イ 新聞紙にあつては毎月3回以上,雑誌にあつては毎月1回以上,号を逐って定期に有償頒布するものであること。
ロ 第三種郵便物の承認のあるものであること。
ハ 当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前1年(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にあつては,6月)以来,イ及びロに該当し,引き続き発行するものであること。
二 前号に該当する新聞紙又は雑誌を発行する者が発行する新聞紙又は雑誌で同号イ及びロの条件を具備するもの
[追記:2009年8月24日]
上記の実験を更に続けてみた。結論として,まともだと評価可能なサイトがただの一つも存在しないということが判明した。
たとえ中立だと自称しているサイトであっても,実際には(何らかの意味で)かなり偏向しているのが普通だということが十分に実証できた。
もちろん,特定の政治団体や思想傾向等の強い団体のサイトでは,一定の傾向性が濃厚になることは当然の前提だ。また,企業等でも,経営上の問題から暴力団や右翼団体などが経営陣(株主または債権者)として乗り込んできてしまっているサイトでは,当然ながら,そのような結果になると予測できていた。
しかし,経営上の健全性に問題がなく,一応中立だろうと想定していた商用サイトでも一定の傾向が強く存在すると判ったときには,非常に驚かされるとともにひどい落胆を禁じ得なかった。
正直に言うと,そのような商用サイトの経営者や主要なエンジニアの中のかなり多くを現実に知っている。だから,今回の実験結果によって,「あ~~,この人はこのような人だったのだ」ということ,あるいは,「要するに,実際には何も権限がないのだ」ということ,あるいは,「本当は特定の団体べったりの人だったのだ」ということ,あるいは,「予想以上に利己的な人だったのだ」ということなどが露骨に判ってしまうと,何だか非常に悲しい気分にとらわれてしまうことが少なくなかった。
ちなみに,そのような人々の中でも管理職以上のポストにある人の中には政府の審議会や研究会の委員である人が決して珍しくない。そこで,そのような目で,それらの人々が委員等として関与した審議会や研究会の答申等の文書を改めて読み直してみると,「なるほど」と理解が深まったところが多数ある。
というわけで,今回の実験では(「リバースデータマイニング」とでもいうべき手法の採用によって)様々な成果を得ることができた。
しかし,これ以上この実験を継続してみても,これまで得られた以上に私の知的好奇心をかきたてる要素を得られる見込みがほとんどないだろうと判断することもできた(=要するに,飽きた。)。今後は,全く別のことによって自分の知的好奇心を満足させようと思う。
というわけで,そろそろこの実験を終りにする。
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