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2009年8月24日 (月曜日)

警察庁:平成21年上半期の暴力団情勢

警察庁のサイトで,平成21年上半期における暴力団の状況に関する分析結果が公表されている。

 平成21年上半期の暴力団情勢
 警察庁: 平成21年8月21日
 http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai17/h21_bouryokudan.pdf

この中で注目すべきなのは,暴力団が企業に食い込んでいるという事実だ。もちろん,暴力団は暴力団として企業に入り込んでくるわけではない。しかし,投資家(株主)または債権者として比較的簡単に企業経営における支配権を握ってしまうことが可能であるため,外見上では暴力団とは全く無関係の一般企業(←IT関連企業を含む。)のように見える会社であっても,本当は暴力団の支配下にあるということがあり得る。そして,そのような企業では,顧客情報等がすべて暴力団の手に渡ることになる。

現在の法秩序は,概括的に言えば,「企業経営者がまともであること」を前提に組み立てられている。例えば,個人情報保護法は,個人情報取扱事業者がまともな事業者であり,主務大臣の監督に服するということを当然の前提にしている。企業の内部統制にしても全く同じだ。しかし,経営陣が本当は暴力団の支配下にある場合,現在の法秩序の基本的前提が最初から存在しないことになる。

一般に,サイバー犯罪等では,企業内の内部犯行が疑われることが少なくない。クレジットカード情報の漏えいなどの場合には,その可能性が比較的高いと言われている。しかし,経営陣が実質的には暴力団である場合,それを内部犯行と呼ぶのは間違っているだろうと思う。そのような企業は隅から隅まで全部犯罪実行のための組織にほかならず,まともな従業員の中に例外的に犯罪者が混入してしまうという場合とは根本から異なっているからだ。

非常に大雑把な言い方をすれば,戦後の日本でずっと採用されてきた「業法」によるコントロールというやり方は,この点において致命的な欠陥を有すると言わざるを得ない。

今後,非常に多くの法令において,監督官庁による行政指導ではなく,直接の摘発と処罰というやり方を大規模に導入するのでなければ,この問題を解決することができるはずがない。

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