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2009年8月 3日 (月曜日)

英国:18世紀以降の著名な刑事事件記録がWeb上で閲覧可能に

英国の過去の刑事事件記録がWeb上で閲覧可能となりそうだ。

 Britain's historic criminal trials go online
 Yahoo (AFP): Aug 2, 2009
 http://tech.yahoo.com/news/afp/20090803/tc_afp/britainhistoryjusticeinternet

日本では,プライバシーの概念が間違って伝えられてしまっている部分があることや「恥」の意識(文化)が強すぎることなどから,仮に英国と同じようなことをやろうと思っても難しい問題に直面してしまうことが多いだろうと予測される。しかし,理論的には,民主主義の原理に根ざし,日本国憲法によっても保障されている「裁判の公開」の原理からすれば,「原則として,裁判記録を公開すべきだ」という結論に至ることになる。

とはいえ,過去の裁判記録を完全なかたちで公開すべきかどうかについては国民の心理的抵抗が少なくないだろうから,拙速は避けるべきだとしても,裁判記録の保存だけはきちんとなされるべきだろう。裁判記録がきちんと保存されていないと,例えば,冤罪事件について再審請求をしようにも「批判の対象となる事件記録がない」という重大な問題と直面せざるを得ないことになる。同じ理由により,検察や警察の行動に違法があったとして国家賠償請求事件訴訟を提起しようと思っても,問題となる案件と関係する裁判記録が存在しなければ,どうにもならなくなってしまうことがある。

ところが,日本の場合,歴史上非常に重要な事件を含め,大半の裁判記録が既に廃棄され,物理的に消滅してしまっている。

日本では,本当は,本来の意味での「司法権の独立」はなく,「公文書の保存」の必要性に関する認識も存在しないのかもしれない。そうれあると仮定した上で,最も極端な立場を採るとすれば,日本は「法治国家」ではなく,「放置国家」であるということにならざるを得ないだろう。

先日,ある人から仄聞したところによると,ある道路交通違反事件で実質無罪ということで不起訴処分を受けたのにもかかわらず,行政処分としての違反点数がカウントされたままという警察実務慣行が存在するそうだ。私自身は経験がないのでそのことを知らなかったのだが,そのような現実があるという。

理論的には,「無罪の推定」が存在する以上,有罪の判決が確定するまでは,交通違反の点数をカウントしてはならないのは当然のことだと思っていたのだが,ここにおいてもまた,日本は「法治国家」ではなく「放置国家」であったようだ。しかも,大半の国民は「何か変だ」と思っていても弁護士を頼んで訴訟を提起するだけの資金的余裕がなく,また,警察にたてつくと後々ろくなことがないため,結局,泣き寝入りとなってしまっているらしい。仮に資金的余裕があって何らかの訴訟を提起しようと思っても,問題となる不起訴事件の記録が保存されているかどうかは相当怪しい。

つくづく情けない国だと思う。


[余談]

本日,最初の裁判員裁判が開廷されるそうだ。最初の公判なので,きっと担当裁判官もエース級の裁判官が担当することになるだろう。しかし,(当然のことながら)裁判官の中でも優秀な人材とそうでない人材とが混在しているし,今後は能力的または人格的に問題がないとはいえない裁判官が訴訟指揮をする事件について裁判員裁判が実施される機会があり得る。

私自身は,そもそも裁判員制度それ自体に反対であり,即時廃止を常に唱えてきたが,実施する以上は国民にとって何か得るものがなければならない。

私が裁判員に期待したいのは,裁判員となった国民が,「裁判官,検察官,弁護士その他の法律専門家の中には,心から尊敬できる人とそうでない人とが混在している」というあまりにも当たり前の現実を冷静にきちんと観察し,「誰が真の意味での司法制度のイニシアティブを握るべきか」について考え直してみるためのきっかけとなることだ。

これは,裁判所や検察庁が期待していることとは正反対のことかもしれない。しかし,ある制度の運用に国民が関与することによって「誰が何を感じ取るか」は,完全に各人の自由の範囲内にある。少なくとも,「裁判所や検察庁や弁護士会や偉い学者などが考える司法のイメージだけが正しい」というようなタイプの立論は,民主主義の基本原理と根本から矛盾している。

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