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2009年6月 3日 (水曜日)

英国:BBCブロードバンドにおける帯域制限に対する批判

BBCが提供しているブロードバンドサービスでは,そのピーク時において,YouTubeのようなビデオコンテンツをダウンロードするための通信速度を大幅にカットして制限しているために,ダウンロード速度が著しく低下し,ビデオコンテンツの品質も大幅に劣化するような結果となっている。そのような制限が利用者に対して事前に知らされることなく実施されていることについて,批判があるようだ。

 BT accused of iPlayer throttling
 BBC: 1 June 2009
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8077839.stm

同様の帯域制限は,日本国のISPでも存在している。

 帯域制限の実施に関するガイドライン
 http://www.jaipa.or.jp/other/bandwidth/guidelines.pdf

帯域制限が実施されることそれ自体は,違法なことではなく,ISPの業務遂行上やむを得ない場合には実施されるべきことだろうと考える。

しかし,問題は,帯域制限を実施するISPがどのような商業宣伝広告を実施しているかに存在している。もし,当該ISPが「常にハイスピードで高品質の映像を楽しむことができる」という趣旨の商業宣言広告をしているのであれば,仮に約款の片隅に帯域制限が実施されることがあることが規定されていたとしても,消費者保護の観点からは違法行為になることがあり得る。そのような意味での違法を避けるためには,当該ISPは,「常に高速の通信が保障されている」と誤解されるような文言を一切使用すべきではなく,逆に「通信速度は一切保障されていない」ということを全ての利用者がすぐに理解できるように周知し,ホームページ上でも明記する必要があると思われる。常に高速通信を利用できるかのように商業宣伝広告をして顧客を集めておきながら実際には制限をするというのでは,詐欺とまでは言わないにしても消費者に対し誤解を与える行為であることは否定しようがない。このことは,帯域制限の実施が何らかの違法性阻却事由によって法的に肯定される場合であっても同じだと考える。

要するに,インターネット上のサービスを提供するプロバイダは,「利用者が常に快適にインターネットを利用できる」という趣旨の宣言広告をしてはならない。

とりわけ,一方では大きなサイズのディスクの利用サービスを提供しておりながら(←この場合,当該ディスクの利用者が大きなサイズのコンテンツのアップロードをするのは当然のことだ。),他方では帯域制限を実施することにより大きなサイズのディスクの利用が十分できないような結果を招いている場合には,不当な顧客の誘引行為となることがあり得ると考えられる。したがって,帯域制限を実施するISPは,データセンター業務を含め,大きなサイズのディスクの利用サービスを無限定の状態で提供すべきではない。もしそのようなサービスを提供する場合には,「帯域制限が実施されることがあるため,通信速度が著しく低下することがあり,ディスクの利用上重大な支障が発生することがある」ということを明記した上で提供するサービスについて契約を締結すべきだろうし,利用料金は,最も低速度である場合を前提とする低料金とするのでなければ,違法行為となる可能性がある。


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