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2009年4月17日 (金曜日)

警察庁:警察における取調べの録音・録画の試行について

警察庁のサイトで,警察における取調べの録音・録画の試行結果が公表されている。

 警察における取調べの録音・録画の試行について
 警察庁:平成21年4月3日
 http://www.npa.go.jp/keiji/keiki/rokuon/rokuonrokuga.htm

 弁護人の立会いのない密室での取調べであるがゆえに,公判において被疑者(被告人)自白の任意性が争点となることがときどきある。このため,取調べ状況の映像及び音声を記録し,任意性に関する証拠として提出するということが海外では既になされているところがあるが,日本でも導入されるということのようだ。

 ただし,近時の裁判例の傾向を観察していると,デジタル記録は改ざんが容易であるので,証拠としての信用性に乏しいという趣旨のことを判示する日本の裁判所の裁判例が散見されることに留意しなければならない。この見解は,一般論としては正しい見解であると思われる。かつてのアナログ中心の時代とは異なり,現代では,電子技術の高度化及び関連装置・ソフトウェア等の価格低下により,デジタル画像や音声等をリアルタイムで人工合成・加工することが非常に容易になってしまっているので,何らの措置も講じられていないデジタル画像やデジタル音声については,オリジナルのままではない可能性を否定することが困難となっている。

 この問題を解決するためには,録音時の機器構成及び録音・録画のための各種設定データを同時に記録し,全体として非改ざん証明が可能なように暗号化した上で信頼できる機関・組織によるタイムスタンプ認証を付するといったような機能をもった記録装置の開発普及が望まれる。記録対象データそれ自体についてだけ暗号化及びタイムスタンプ認証を得ても,録音・録画のための各種設定によって最初から異なる人物の画像や音声になるように合成されるよう設定されている場合,データ本体の非改ざん性が証明されても,その信用性が証明されたことにはならない。したがって,どのような装置及びソフトウェアを用い,どのような設定の下において記録がなされたのかというデータについても記録し,その記録の非改ざん性が証明されなければならない。

 なお,この問題は,スタンドラロンの記録装置においても生じ得る問題ではあるが,オンラインのデジタルデータについても理論的には生ずる可能性がある。この点については,下記の拙稿を参照されたい。

 Online Witness - How to Prevent Fake Evidence (November 2003)
  http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/OnlineWitness6.pdf

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コメント

キメイラさん こんにちは。

IT推進をとめてしまうと,私も「サイバー法」の授業をする必要がなくなってしまい,解雇されてしまうかも・・・(笑)

投稿: 夏井高人 | 2009年4月20日 (月曜日) 23時07分

 夏井先生ご応答ありがとうございます。
 機械音痴と思われる裁判官や検察官の中にも自サーバに自作水冷パソコンをつなげて日夜研究に励んでいる人もまれにいます(お客さんですがw)。
 ただ,逆に機械音痴の人の方が,電子データやコンピュータ処理(データマイニング)をほぼ無条件に信用する人の方が多いみたいです。鮮明なATM防犯デジタルビデオで降込詐欺の出し子の犯人性ばっちりとか。
 しかし,ご指摘のように「改ざんされていないことの証明」という「悪魔の証明」が普通になると逆転するかも知れないですね。そうなれば,ハッシュ関数を用いたハッシュ値で証拠化するんでしょうけど,ハッシュ関数や同じハッシュ値のユニークさ(80~840京分の1)がどこまで檀上で理解されるか不安ですが(汗。
 なお,デジタル推進化を止めることは反対です。私が喰いつめてしまうからです(爆。

投稿: キメイラ | 2009年4月20日 (月曜日) 08時03分

キメイラさん こんにちは。

まあ,いろいろありますが,データをいかに証拠化するかという観点からすると,自ずと選択肢が狭まってしまうんですよ。しかも,裁判官の中には理解力の強くない人も全くいないわけではなく,どのような裁判官に当たってしまうのかは博打みたいなところがあるので(←裁判員制度が実運用になると,もっと博打的になってしまいます。),最もレベルの低い裁判官であっても理解できるような手法を選択しないといけないという問題があります。加えて,コストの発生というかなり重大な問題もあります。結局,なかなかうまくいなかないものです。

こうなってくると,かなりおおざっぱな予測ですが,特別の非改ざん処理をしていないデジタルデータというものは,裁判で用いるための証拠としては,人間の記憶に頼る「証言」や「供述」よりもずっと信頼性の乏しい証拠だという観念が定着してしまうことになってしまうでしょうね。

デジタル化の推進をやめさせることにしましょうか?(笑)

投稿: 夏井高人 | 2009年4月19日 (日曜日) 22時06分

 アナログテープの改ざん鑑定は,音声波形の歪み(不連続)・ワウフラッター波形の歪み(同)・ホワイトノイズバランスの不連続が,三種の神器でした。しかし音響工学の進展により,逆波形相殺による消音が一般化した上に,デジタルレベルで波形修正(肉声の高低や艶)がきめ細かにできるようになったので(以下略。
 これは,潜水艦の音響探査技術のスピンアウトが発端ですが,歌手の3テイクであとはデジタル修正というCD技術で開花してしまいました(口パコが増えた原因とも言われてます)。
 そうすると,不可逆的ダイレクト暗号化も大事ですが,デジタル音声やデジタル画像自体も,サンプリングfズレやノイズのステガノグラフィ解析という方法で(以下略。

投稿: キメイラ | 2009年4月19日 (日曜日) 09時03分

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