総務省:情報通信審議会情報通信政策部会インターネット基盤委員会:地理的名称に関連するトップレベルドメイン検討ワーキンググループ(第1回会合)議事概要
総務省のサイトで,2009年2月3日に開催された「情報通信審議会情報通信政策部会インターネット基盤委員会:地理的名称に関連するトップレベルドメイン検討ワーキンググループ(第1回会合)」の議事概要が公開されている。
情報通信審議会情報通信政策部会インターネット基盤委員会:地理的名称に関連するトップレベルドメイン検討ワーキンググループ(第1回会合)議事概要
総務省: 平成21年3月13日
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/joho_bukai/090203_3.html
著名な地名などが勝手にドメイン名として登録されたりすると,色々面倒な問題が発生することはよく知られている。サイバースクワッティングとして知られている問題はその一つだ。
「なかなか面倒そうだ」と考えている間に,ふと,ある基本的な問題に気付いた。それは,「著名な地名などを使うことは本当にいけないことなのか?」という疑問だ。例えば,「アルプス」と言えば,欧州のスイス,イタリア,フランス,オーストリアなどにまたがる巨大な山脈のことを意味する。その規模は驚くべき雄大さを有し,よく晴れた日にフランス~オーストリア間の航空路を飛ぶ旅客機に搭乗すると,ただただ驚きの光景を目にすることができる。日本の高山とは全く比較にならないくらいの巨大で広大な高山がどこまでも連なっているのだ。ところで,日本には,「日本アルプス」という地名が存在する。これは,本州の中部地方にある高山地帯のことを指す名称で,さらに「北アルプス」と「南アルプス」とに分かれる。しかし,本件本元のアルプスと比較すると,まるでゴミのように小さい。
同様の例として,例えば,欧州のアルプスに咲く「エーデルワイス」という高山植物がある。小さな植物だけれどもその白い花の愛好者は少なくない。ところが,日本には,同じような名前のつけられた商品が山ほど存在する。その中には,植物のエーデルワイスが持つ清楚な雰囲気とはまるで異なる印象を与えるものが決して少なくない。類例は数え切れないくらいたくさんある。
さて,スイスの人々が「日本アルプス」を実際に目にした場合,そして,アルプスに自生する植物と似たような名前がつけられた日本の商品を目にした場合,果たして心の底から歓迎の気持をもつことができるだろうか?
これが根本的な疑問の発端だ。
日本には外国(欧州や米国だけではなく,中国や韓国のものも含む。)の著名な地名等を勝手に転用してしまっている地名,人名,企業名,商品名などが数え切れないくらい多数存在するし,それらの名によって商標登録をしたりドメイン名登録をしたりしている例も無数にある。例えば,京都の「祇園」はインドに存在していたという「祇園精舎」に由来することは間違いないわけだが,現代のインドはヒンズー教徒とイスラム教徒で大半が占められ仏教徒が少ないためにあまり問題になっていないだけかもしれない。また,観光地で「日本のナイアガラ瀑布」と言ったような感じの名前をつけているところもあるけれど,本物のナイアガラの滝を愛する人々からすれば,かなり面白くないことかもしれない。
というわけで,日本の地名を用いている海外の事例を単純に批判する前に,まず自分の手をじっと見つめることが大事なのではないだろうか?
とかく最近の人々は語源や語の由来には無関心なのだけれど,よくよく考えてみると,日本語の中には上記のような転用例が非常に多く存在する。そのことをきちんと理解しないまま,単に外国での出来事を非難するのでは,あまり説得力がないかもしれない。
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