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2009年2月 5日 (木曜日)

ネット上の誹謗中傷

インターネットが普及する以前から,パソコン通信の電子掲示板などで誹謗中傷はあったし,今後もなくならないだろうと思う。これまでずっと表現の自由の問題との関係で論じられてきた法的課題の一つだ。しかし,あまりにもひどいものが多すぎる。

 お笑い芸人をブログで中傷 男女18人を名誉毀損容疑で立件へ
 産経ニュース: 2009.2.5
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090205/crm0902051045007-n1.htm

この記事の事件報道を読んでいると,警察がやっと重い腰をあげつつあるようにも見える。しかし,現時点では,タレントなどのように社会的名誉の低下によって商品価値が低下する可能性が高い被害者の場合にほぼ限定されたかたちで検挙・起訴がなされているのが実情で,本当に弱い立場にある一般の人々に対する保護は十分ではないと思うことが多い。警察は,「ごく普通の市民のささやかな幸福と平穏な生活を守ること」にもっともっと精力を傾けてもらいたいものだと願う。

また,最近では,嫌がらせ,セクハラ,誹謗中傷,イジメなどの要素が複雑に混在しているタイプのものが結構たくさんあり,これまでの法理論のように,ある一面だけを取り上げ,その部分だけに焦点をあてて考察するようなアプローチがあまり意味をもたなくなってきているように思う。当然のことながら,(ストーカー規正法等を含め)現行の法制度の大多数もまた,このような社会的被害の特定の側面だけに着目し,その部分に相当する法的利益(法益)の侵害に対する対応だけに限定した対処がなされている。そのため,現実に存在する攻撃や被害といったものとうまく符合する法制度がないと言ってよい。

おそらく,伝統的な刑法理論における保護法益の分類(理論)にこだわらないで,新たなネット上の保護法益を直視し,立法論を含めて適切な対応をしていく必要があるのではないかと思われる。

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