欧州司法裁判所:政府が取得した外国人の情報を警察目的で利用してはならない
欧州司法裁判所(European Court of Justice)は,2008年12月16日,非常に重要な判決をした。すなわち,政府は,外国人に関する情報を,居住の権利に関する法令を適用するための「特別の必要性がある場合」に限り,外国人登録データベースに入れることが許されるが,そのような情報を統計の目的または犯罪防止という見地から記録したり処理したりしてはならないと判決したのだ。
Judgment of the Court of Justice in Case C-524/06
Heinz Huber v Germany
A CENTRALISED REGISTER OF FOREIGN NATIONALS MAY CONTAIN ONLY THOSE DATA WHICH ARE STRICTLY NECESSARY FOR THE APPLICATION OF THE RULES RELATING TO THE RIGHT OF RESIDENCE
The processing and storage of those data relating to Union citizens for statistical purposes or with a view to fighting crime is contrary to Community law.
http://curia.europa.eu/en/actu/communiques/cp08/aff/cp080090en.pdf
Police should not keep foreigners' data
European Voice: 16.12.2008
http://www.europeanvoice.com/article/2008/12/police-should-not-keep-foreigners-data/63438.aspx
この判決の論理は明快であり,EUの個人データ保護指令の解釈としても正しい解釈であると思われる。しかし,米国や英国(そして,たぶん日本)における政府や警察における考え方は全く異なっていることから,今後様々な場面で相当厳しい政治的軋轢が生ずる可能性がある。
ちなみに,もし日本の裁判所が同様の争点について判断を求められると仮定した場合,この欧州司法裁判所の判決と同じ解釈に基づく判決をする可能性は絶無に近い。
いずれにしても,人権や個人情報の保護を考える上でとりわけ注目すべき判決であることに,ほとんど疑問の余地がない。
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