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2008年12月 5日 (金曜日)

見せ掛けだけ

大学における投資の失敗については「大学の投資失敗による損失拡大」で既に書いた。その後様子を観ていたら,そのような大学の経営状況は一般に報道されているよりもずっと悪いらしいということが分かってきた。

よく考えないで塵屑に投資し,証券会社や怪しい経営学者や評論家のような人々の口車に乗って詐欺同然に巨額の資金を奪われたあげく,世界的な経済危機のあおりを受けて実質的には破産同然の状態になってしまっている大学は決して少なくないようだ。

大学でありながら,架空の金融商品への投資を積極的に推進するような経営姿勢,講義内容,資産管理の3点セットをもっているところは特にあぶない。なぜなら,そのようなところでは,「投資は危ないのではないか?」といったタイプの非常に正しい意見に対して,経営陣が決して耳を傾けようとしないからだ。

しかし,大学は教育・研究の場なのであって,資産運用のための場ではない。

どうしても投資をしたいという人は,大学の資産を投資に使うのではなく,自分のポケットマネーで投資をすべきだし,もし投資に失敗したら潔く自己破産をして清算した上で,教育と研究の世界からは永久に消え去って欲しいと思う。

さて,このような経済・経営に属する問題だけではなく,現在の大学は,別の意味で架空のものに賭けてしまっていることによる大きなリスクをかかえていることがある。このリスクは,中小の大学というよりは,大規模で非常に有名な大学のほうがより多く抱えているリスクだろうと思う。

それは,「教育と研究の崩壊」というリスクだ。

大学院は学部よりも高度な教育を実施するための組織だ。大学院の中でも法科大学院のような専門職大学院では,入試競争が激しいため,学生について一定の質を保つことに成功しているところが比較的多い。

しかし,研究職養成のための大学院と専門職大学院とを含め,実質的には入試競争が存在していないところや,ほぼ無試験のようなかたちで学生の頭数だけそろえているようなところでは,学生の質が大幅に低下するのが当たり前だ。そのようなところでは,いかに優れた教授が揃っていたとしても,学生のレベルの大幅ダウンを食い止めることができない。

講義や演習を受けるためには,学生のほうにそれをこなすだけの体力と能力と教養と意欲がなければならない。どんなに美味しい酒であっても,小さな盃に1升の酒を全部注ぎ込むことはできない。しかも,それを注ぎ込むのに使うことのできる時間は非常に短く限られている。

にもかかわらず,そのような資質に乏しい学生を大学院生として大量に受け入れてしまった大学は,それらの者を中途退学させるわけにはいかないので,修士論文をどんどん捏造(←他の教授の論文等の剽窃を含む。)し,大量生産して,形式的に学位を与え,卒業させるしかなくなる。学者(研究者・教育者)としてのプライドを捨て,奴隷のように修士の大量生産マシンになってしまっている教授達は,本質的には既に「大学教授」ではなくなってしまっているということを自覚すべきだろう。

結局のところ,安易に入学を認め,不本意ながら大量の修士を付与し続けると,数年もしないうちにそのような大学のレベルはとんでもなく低下してしまい,以後そのような評判を払拭して評価を高めることが非常に難しくなってしまう。文部科学省や評価機関による評価も厳しいが,学生や受験生からの評価はもっと厳しいし,更に企業からの評価はとんでもなく厳しいと思っている。

私は,学生の評価に迎合する必要はないと思っている。しかし,学生の評価は,大学教授が自己評価しようとする際の重要な参考資料の一つになることがあるということは疑いない。そのあとは,個々の大学教授の教育・研究のスタイルの問題なので,軽率に他人が口をはさむべき問題ではないだろうと思う。とりわけ,とても質の悪いFD(ファカルティデベロップメント)を教員に押し付けることだけはやめて欲しい。そもそも「絶対に正しい教育方法」など世界中のどこにもあるはずがないので,「FDというマネジメントモデルそれ自体が明瞭な自己矛盾を抱えているものであって,本来的に成立不可能なものだ」という当たり前すぎるくらい当たり前のことにすべての教員が一日でも早く気付いてほしいと願っている。

自分が採用したスタイルに基づく教育・研究の結果については,それが良いものであれ悪いものであれ「自分が責任をもって背負う」というのが本来の規範となっているはずだ。

大学が投資にのめりこむことはよくない。その結果,場合によっては背任行為として処罰対象となってしまうこともあるだろう。それと同様に,大学院において安易に学生を集め,学位を乱発してはならない。その結果,場合によっては大学と大学院の廃止を招くことになってしまうこともあるだろう。

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