英国議会で、有力議員が政府に対し誹謗中傷禁止法の改正を求める
インターネット上の誹謗中傷合戦のようなものは常に存在し,最近では日韓及び中韓での誹謗中傷合戦が話題になった。あまり感心できる出来事ではないが,それでもまだ言い争いというかたちで相互的になっているからまだましなほうではないかと思う。悪質な例としては,ネットつぶしやブログつぶしのような感じで,一方的なコメントを大量に書き込んだりする事例や,あるいは,匿名で悪口や罵詈雑言を浴びせる事例などもある。
こうした中で,英国議会の有力議員数名が,インターネット上の誹謗中傷行為について対応するための法改正を英国政府に要求する動きがあるようだ。
MPs demand reform of libel laws
Guardian: 18 December 2008
http://www.guardian.co.uk/media/2008/dec/18/mps-demand-reform-of-libel-laws
インターネット上の言論の規制については,言論の自由(free speech)を守るという立場から常に批判のあることであるし,現実問題として,人間の言動はそれ自体として意味があるわけではなく,単なる文字列が存在しているのにすぎない。それらについては,情況という要素を考慮した上で文脈的・意味的解釈を加えた上でないとその社会的機能等を測定できない。したがって,常に解釈者による主観によるバイアスがかかってしまうことになる。そのことを突き詰めると「会話不能」という哲学の領域では古くからある課題と直面することになってしまうので,それを回避するために,人々は適当なところで妥協しつつ,自分の主観が正しい意味解釈だと思いこんで行動することにしている。だから,この問題は,原理的に永久に解決できない問題というカテゴリに属するかもしれない。
しかし,それでもなお法律家は現実に発生してしまった事件に適切に対応しなければならないわけだし,必要に応じて,議会は必要な立法等をしなければならない。
日本国では,目下のところ,現行の刑法や民法で対処できる事案が多いのではないかと思われる。それは,民法や刑法の条項の規定の仕方が比較的抽象的であるがゆえに解釈によって適用範囲を拡張したりしやすいということに由来しているかもしれない。けれども,机上の議論だけでは妥当な解釈が導き出されないことがあることも既知の歴史的事実なので,この分野の研究者は,ネット上のフィールドワーク的な研究手法の重要性を忘れないようにしながらその研究を進めるようにすべきだろうと思う。
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