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2008年12月20日 (土曜日)

海底ケーブルの切断により,地中海~アフリカのインターネット接続が不能となり,この地域の経済にも重大な悪影響

地中海のシチリア島~大西洋に伸び,アフリカ一帯をカバーしている海底ケーブルが切断されてしまった模様だ。その結果,地中海~アフリカのエリア(フランスなど幾つかの欧州諸国も含む。)にあるインターネット接続が不可能または非常に困難な状況となっており,エジプトなどの経済に甚大な悪影響を及ぼし始めているようだ。

 Severed cable disrupts web access
 BBC: 19 December 2008
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/7792688.stm

このような海底ケーブルの切断による経済への悪影響は,日本を含むアジア諸国でも同じだ。現代社会の経済は,インターネットに大きく依存している。そして,それはバーチャルな存在なのではなく物理的に存在している通信手段によって支えされている。その物理的な通信手段が失われてしまうと,もちろんインターネットも消失し,それに依存した経済も直ちに死亡する。

日本国では,電気通信事業法によって重要インフラの確保が電気通信事業者に義務付けられている。また,本来であれば,電気通信事業者は,総務省が定める各種基準に従って通信のための物理的設備や施設(躯体を含む。)を構築しなければならないことになっているのだが,そのような基準はもともと電信電話公社のために存在していたものなので一般のプロバイダなどには周知されているとは言えない状況にあり,その結果,物理設備としてはかなり問題となるような脆弱性を抱えたプロバイダが多数存在するという結果を招いている(例:耐震・防火設計になっていないビルの中に設置されたデータセンターやストレージサービスなど)。それでもなお,そのような問題は,国内の問題として,日本国政府がしっかりしてれば改善可能な問題だろうと考える。

問題は,BBCが報じているような海底ケーブルだ。国際的なインターネット接続の多くは現時点でもなお海底ケーブルという物的設備に依存して存在している。これが切断された場合,日本は文字通り「島国」としてインターネットの世界の中で孤立した存在となってしまうだろう。このことは英国のような国でも同じだ。

また,通信設備だけではなく,非常に大きなISPやクラウドコンピューティングサービスプロバダイが経営破綻や大震災などのために運営不能状態に陥ると,やはり同じような事態が発生してしまう。

インターネットの世界では,あまりにも「上もの」のビジネスばかりに目が行き過ぎてしまったことを反省すべきだろうし,また,少数の企業にサービスやデータが集中してしまうことを容認するような空気が支配的であったことについても真面目に再検討がなされるべきだろう。

通信を可能とするために最も大事なのは「ボトム」を運営するキャリアなのであり,それなしには全てが存在しない。また,企業の事業継続性を維持するためには,企業の情報資産が集中しているような場所を確実に守らなくてはならない。


[追記:2008年12月22日]

関連記事を追加する。

 International web services improve after cable cut
 AFP: 20 Dec, 2008
 http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5iUeQc1fPCbrlQsteN5ZvoOI97obw

 Repairs start on Mediterranean telecoms cables
 REUTERS: 21 Dec 2008
 http://africa.reuters.com/wire/news/usnLL442826.html

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