等身大女性ロボット
「ラースと、その彼女」という映画がある。プレゼントされた等身大女性人形を愛する心優しい男性というシチュエーションの映画で,そこに出てくる人形は超大型のバービー人形のような人形だ。
ラースと、その彼女
http://www.cinemacafe.net/movies/cgi/20850/
このような人形の女性を愛好する(または愛する)孤独な男性は,日本においても米国においても現実に多数存在するらしい。「強い女性とはお付き合いできない」という心理傾向をもった男性がそうなることが多いという指摘もあるけれども,本当のことはよく分からない。ともあれ,そのような等身大人形の製造技術は日増しに高まっており,現在では,ほとんど生きた人間と変わらないようなものが製造され,販売されている。それだけ需要があるということなのだろう。
4Woods Manufacturing
http://aidoll.4woods.jp/
そのような等身大女性人形を性行為の対象とするということが結構古くから(遅くとも南極探検隊派遣以降には)あったということは常識に属することであるけれども,それらは単なる人形に過ぎなかった。
けれども,もし単なる人形ではなく,人間と同じようにふるまい行動するアンドロイドであるとすれば,恋人のようにお付き合いできるのではないかと考える人が出てくるのは当然で,そのようなモチーフを扱った漫画作品としては,松本零士氏の『セクサロイド』や石ノ森章太郎氏の『セクサドール』などが非常に有名な作品となっている。
他方,性行為とは無関係に,アニメのキャラクタである美少女を等身大で作成してしまおうという人々はかなり多数存在し続けている。
百花繚乱! 美少女等身大フィギュアが一挙30体Over!! in 東京アニメセンター 1体目
ASCII: 2007年12月03日
http://ascii.jp/elem/000/000/089/89938/
小さなフィギュアであれば,それなりに可愛らしいと思えるが,等身大となると,(少なくとも私にとっては)やや不気味だ。(笑)
ともあれ,これらの映画や漫画作品などに影響されたのかどうかは知らないが,カナダの男性が本当に等身大ドールのようなロボットをつくってしまったようだ。顔の形が日本人風なので,日本の企業が製造した等身大ドールのパーツを転用したのではないかと想像する。
カナダ人男性、理想の「恋人ロボット」製作 名はアイコ
CNN Japan: 2008.12.12
http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200812120016.html
このような傾向をみていると,今後の秋葉原では,単なる等身大フィギュアではなく,声を出し,挨拶し,人間に対して何らかの反応をし,歩いたりすることのできるアニメキャラクタ等身大ロボットが主流に近いくらいのトレンドになっていく可能性が高いのではないかと想像する。
問題は,その先の未来だ。
強い個性をもった人間とはお付き合いできず,人形のようなロボットとひそかに暮らす人々しか存在しないような未来都市の姿を想像すると,ぞっとしてくる。
ちなみに,男性型アンドロイドが人間の女性と愛し合うというテーマの映画もある。人工知能の理論と技術が行き詰っている現在,そのような未来が到来する可能性は非常に低いけれども,外形的にやや近似した出来事はあり得ることかもしれない。ただし,私の個人的意見(解釈)としては,米国で製作されたアンドロイドを主人公とする映画の中には,本当はいわれのない人種差別に対する抗議の趣旨で製作されたものが少なくないのではないかと思っている。
アンドリューNDR114
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id160134/
しかし,他方では,高齢者や身障者の介護用ロボットの開発がどんどん進められている。老人になっても「人」と触れ合っていたいという欲望や本能があるのは当然のことだと思う。ボーボワールは,『老い』の中でそのことを十分過ぎるくらいに表現している。それと同時に精神の老化によって非常に頑固で「生きた人間」と平穏に交渉をもてなくなってしまうような人々が増加するだろうということは火を見るよりも明らかだ。したがって,この分野でも生きた人間そっくりの等身大ロボットが開発され利用されるような未来が待っているかもしれない。
どちらにしても,かなり寂しい未来像ではある。
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