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2008年12月 7日 (日曜日)

金融危機の時代における訴訟多発とe-Discoveryに備えたデータの確保

金融危機は,世界的な規模での恐るべき不況を発生させている。その結果,企業の破産が増加しており,また,従業員の解雇に伴う労働訴訟が多発している。このような状況において,企業の業務で用いるデータや資料の大半が電子化されているため,破産手続(民事再生手続を含む。)や労働訴訟において法廷で提出される訴訟資料も電子的なものが多くなってきている。そして,米国を中心に進められているe-Discoveryにおいては,証拠として提出される電子データが改ざんされていないオリジナルのものであることを要求されることが多い。

この関連で,分かりやすい解説記事を見つけた。

 e-Discovery Compliance As Domestic And Foreign Litigation Grows
 Corporate Counsel: December 3, 2008
 http://www.metrocorpcounsel.com/current.php?artType=view&artMonth=December&artYear=2008&EntryNo=9108

日本国においては,e-Discoveryはまだ馴染みが薄いかもしれない。しかし,現実の訴訟においては,電子データで保存されている各種書類をどのようにして法廷に顕出するかが大きな問題となってきた。この問題は,コンピュータデータというものが出現した当初から存在していた問題だった。しかし,裁判所を含む法曹会の無関心から理論研究があまり進められてこなかったことが大いに災いして,現実の訴訟手続では非常に奇妙な証拠調べが平然となされることが珍しくない。例えば,データベース内でのデータ処理が正確になされているかどうかが本当は大事なのに処理がなされた後の結果を示すプリントアウトを書証として提出することが求められたりする。現在の民事訴訟法だけでも検証の手続で正確な証拠調べを実施することが可能なはずなのに,多くの裁判官は検証や鑑定の実施に対して好意的ではない。そのために,実際にビジネスをしている企業の人間の目からすれば少し奇妙な「紙」のやりとりが繰り返されることになる。その中には明らかに無駄と思われるものが少なからず含まれている。

このようなタイプの問題を解決するための手段として,電子的な文書についての非改ざん証明(電子認証)の技術が開発されてきており,既に実用段階に入っている。にもかかわらず,そのことを知らない企業経営者や法律家があまりにも多すぎる。

訴訟関係人間で直接に電子的な証拠の取調べ及びその準備を実施するe-Discoveryを,おそらく日本でもそんなに遠くない将来導入せざるを得なくなるだろう。また,それに伴って訴訟書類等についてLegal XMLを踏まえた書式に変えていかざるをえなくなると思われる。けれども,日本の現状は,世界の中でポツンと穴が開いたような状態となっている。緊急の対応が必要だと力説したい。

加えて,私は比較的初期のころから電子的な証拠の問題に対する研究と取り組んできたが,この分野での研究者が極めて少ないという事実を知っている。研究者の養成も急務だろうと思われる。

他方で,完全なペーパーレスはやめたほうが良いと思われる。最も重要な書類は紙で保存するのが最も安心かもしれない。そして,比較的重要ではないものに限定して電子的な処理を導入すべきだろう。この場合,最も重要な書類は「紙」で存在しているため,通常の書証としての証拠調べにすぐに対応できることにもなる。

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