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2008年11月29日 (土曜日)

オバマ次期大統領の携帯電話にVerizon Wirelessの従業員が無権限でアクセス

毎日のように不正アクセス関連の記事がニュースで流れている。不正アクセスは,PCだけではなく携帯電話の通話記録に対してもなされ得る。なぜなら,通話記録は携帯電話機の中にではなく,電話会社のコンピュータシステムの中に格納されているからだ。

 Obama氏の携帯電話記録に無断アクセスの Verizon 従業員ら解雇
 japan.internet.com: 2008年11月26日
 http://japan.internet.com/busnews/20081126/12.html

日本国の不正アクセス禁止法が定める「不正アクセス」は,電気通信回線を介して実行されるものに限定されている。従って,日本国では,ISPや電話会社の従業員などが無権限で直接にコンピュータシステムにアクセスしてそこに記録されているデータ内容などを盗み見たとしても,不正アクセス罪は成立しない。けれども,諸外国の無権限アクセス罪(日本国の不正アクセス罪に相当)の多くは,電気通信回線を介したアクセスに限定していないため,コンピュータシステムに対して直接にアクセスした場合であっても無権限アクセス罪として有罪になることがある。

ところで,ISPや電話会社の従業員が情報セキュリティの目的などで利用者の通話記録等のデータにアクセスすることはしばしばある。それゆえ,電気通信事業法は「守秘義務」を定めているのであるが,この守秘義務がちゃんと守られているかどうかはよく分からない場合が多い。正式に質問をしても「守っている」と回答するのに決まっているので,意味がない。しかし,ISPに対して「ある巧妙な実験」を試みたところ,「かなり有名で一見しっかりしていそうなISPでも全然守秘義務が守られていないことが多々ある」ということを突き止めることができたから,現実にはあまり守られていないのかもしれない。これはかなり問題だと思う。

しかし,それでもなお,一定程度の通信の監視が必要になることがある。とりわけ,コンピュータ・ウイルスその他の危険なプログラムの侵入を防ぐために通信の監視がなされる場合や,社内規則等によって私的な利用(勤務中のアダルトサイトへのアクセスなど)が禁止されている場合,その違反行為がないかどうか監視がなされることがある。

そのような監視は,当該システムの利用者に対して知らされていることがあるし,何に対してどのような監視がなされるのかという内容次第では,その利用者に知らせるのでなければ違法行為となってしまうことがある。

ともあれ,そのようにして監視がなされていることに気付かず(または,そのことをすっかり忘れてしまい),勤務時間中にアダルトサイトにアクセスしていたことが判明して処分を受けたり,コンピュータウイルスに感染してひどい目にあってしまったりしたといった事例が報道されている。

 水に流せず!水道局局長、勤務中にHサイト
 サンスポ: 2008.11.28
 http://www.sanspo.com/shakai/news/081128/sha0811280503003-n1.htm

 公務中「アダルト」接続17万回 あげくに“感染”
 産経ニュース: 2008.5.1
 http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080501/crm0805012037030-n1.htm

監視の適法・違法の議論はあり得ると思うけれども,そもそもそのような利用者が存在することに最大の問題がある。これまた困ったものだと思う。

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