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2008年11月21日 (金曜日)

バーチャル世界と現実世界との境界

セカンドライフをはじめ,バーチャルな空間でバーチャルな生活を楽しむ人は少なくない。しかし,本当にバーチャルなのだろうか?

ネット上でバーチャルな人格を保有し,ネット上の別人として行動していても,そのバーチャルな人格をもつアバターなどを操作しているのは,PCの前に座っている現実の「誰か」なのだ。そして,その「誰か」は現実の人格をもっている。

もちろん,ネット上のバーチャルな人格は,現実の人格をもつ現実の人間が普段の生活では見せることのない隠れた側面を前面に押し出して行動しているかもしれない。しかし,それは現実の普段の生活の中では隠蔽されているというだけのことであり,本当は現実に身につけている人格の一部が,ネット上では隠蔽されることなく,誇張され,拡大されて表現されているだけのことなのだ。そして,現実に生きている人間がバーチャルな人格を操っているのである以上,その欲望もまた現実の人間の欲望を反映することになる。

最近,バーチャルな空間で知り合い,バーチャルな空間での友人,恋人,夫婦などになっていた者が,「うらぎられた」と感じたとたんに,現実世界での「お相手」を探し出し,殺傷するといったような事件が結構たくさん起きているようだ。

Japanese Woman Kills Online Husband
Tom's Guide: October 27, 2008
http://www.tomsguide.com/us/Maple-Story-Virtual-Divorce,news-2838.html

バーチャル空間で友人,恋人,夫婦などとしてふるまっていたバーチャルな人格の背後にいる現実の「お相手」を探し出すことは,実際にはそう簡単なことではないかもしれない。それでも草の根を分けてでも探し出してしまうことがあるところを見ると,「うらぎられた」と感じた場合の反作用的な心理もまた異常に拡張されてしまうのかもしれない。

ネット心理学上ではどのように扱われているのか,私は専門家ではないのでよく分からないけれど,とても興味深い研究領域であることは否定できないように思う。

そして,法律論からすると,バーチャルな空間においても,やはり秩序と倫理が必要だという非常に保守的に聴こえてしまうような結論を出さざるを得ない。ただし,その秩序と倫理の具体的な内容は,現実世界における強行法や公序良俗に反しない限り,基本的には当該バーチャル空間(部分社会)の住人の民主主義によって決定されるべきことなので,迂闊に権力が介入すると,とても大変な騒ぎになってしまうかもしれないことに留意すべきだろう。

ちなみに,バーチャルワールドでは,現実の世界と同様に,バーチャル世界での財産であるアイテムやバーチャルマネーなどの詐取事件が多発しているらしい。これはこれで別の角度からの検討が必要な出来事だろうと思う。

One Billion At Risk As Cyber Criminals Target Virtual Worlds
ITProPortal.com: 20 Nov. 2008
http://www.itproportal.com/articles/2008/11/20/one-billion-risk-cyber-criminals-target-virtual-world/

ところで,日本では,いわゆる「裏サイト」に対する介入が盛んになっている。

その「裏サイト」なるものが本当はヤクザやマフィアなどが子供達を犯罪の場に誘い出すための罠である場合には,警察がしっかりと対応しなければならない。また,もしその「裏サイト」なるものの経営主体が健全であっても,その内部において無秩序や違法が横行しているのであれば,何らかの対応が必要だろう。しかし,「裏サイト」というカテゴリに分類可能なサイトであったとしても,成人によるサブカルチャーのようなサイトにまで権力が介入するのはどうかと思う。もちろん,麻薬取引や殺人のための裏サイトといった違法な行為を主体とするサイトであれば警察の介入を免れることはできない。だが,「少々変わっている」というだけで犯罪者のような目でみることはよろしくない。

自然の生態系の中において,「多様性」を維持することはとても大事なことだ。実は,自然の生態系が非常に複雑であり多様であることによって,人類は生存することができるのだ。

同様に,人類自身も多様でなければならない。

単調な社会は,権力者の視点からすれば統御しやすい社会かもしれないが,本当はとても脆い社会でもある。

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