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2008年11月21日 (金曜日)

オンライン・プライバシー

「ネット上にプライバシーはあるか?」と問われると,「ある情報がネット上で公開されているのであれば,その情報はプライバシーではない」といった種類の答えが返ってくることが多い。

一見するととても正しい答えのように聞こえてしまう。

しかし,正しくない。

最も典型的な例としては,「私人の秘密が,ネット上の電子掲示板で,誰かによって公開されてしまった」というような例が分かりやすいかもしれない。この場合,「個人の秘密やプライバシーを侵害するための手段として電子掲示板が用いられた」と考えるのが正しく,その電子掲示板上の情報が継続的にプライバシーを侵害し続けていると考えることができる。

ところが,世の中の「有識者」と呼ばれる人々の中には,法というシステムが一体どういうものなのかを全く知らないまま,「公開されてしまった以上はプライバシーじゃない」などと平気で述べる人が決して少なくない。このような意見は,法律家の目からすると明らかに間違いだ。「私人の秘密が公開されてしまっている」という事実があるからこそ「プライバシー侵害だ」と言い得るのであり,そうであるからこそ,侵害による損害の賠償を求めたり,情報の公開の停止等を求めたり,刑事処罰(名誉毀損罪)のための告訴をしたりできるのだ。何も侵害されていない状態のときは,これらのアクションを起こすことはもちろんできない。

要するに,法のシステムは,ある法的に守られるべき利益の侵害が発生した場合,その侵害行為を原因として何らかの訴訟を提起したり権利行使をしたりするための要件として「プライバシー」などの抽象的な「権利」というものを用意しているのであって,「侵害されてしまったら権利はなくなる」と考えるのは,法のシステムについて全く無知であることを自認する行為であることになる。

とはいえ,「では,何が侵害行為となるのか?」というと,実際にはその判断が結構難しい場合が少なくない。情報技術が進歩し,ネットの利用方法が変化するにつれ,人々の考え方にも変化が生ずる。

更に問題なのは,「どうやって証拠をみつけるか?」だ。この問題は,何もネットに限定されたものではない。それゆえ,各国の訴訟法は,証拠開示を求めるための手続を設けたり,あるいは,法解釈論上で一定の推定をすることにしたりすることによって,立証上の難点を解決しようとしてきた。

クラウドコンピューティング(グリッドコンピューティングを含む。)については,バーチャルなサーバの背後に実際には何があるのかが見え難い場合が多い。もしかすると,そのようなサービスを提供している事業者自身でさえ,現実のシステムを全部アウトソースしており,一体何がどうなっているのかを全然把握できていないこともあるかもしれない。そのような場合については,製造物責任と同じような考え方を導入し(あるいは,サービスを提供するシステム全体を一つの製造物としてとらえ),証明責任の転換を大規模に導入して対処することなっていくだろうと思う。あるいは,そのように法解釈を展開していかざるを得ないかもしれない。要するに,「クラウド」によって,法的責任まで雲の背後に覆い隠してしまうことはできないということを理解すべきだろう。

というようなことを考えつつ,ネットで検索していたら,新しい記事が2つ目に入った。面白い。

Internet Expert: Online privacy has gone too far
Harvard Law Record: 11/20/08
http://media.www.hlrecord.org/media/storage/paper609/news/2008/11/20/News/Internet.Expert.Online.Privacy.Has.Gone.Too.Far-3554284.shtml

Does AT & T's Newfound Interest in Privacy Hurt Google?
New York Times: November 20, 2008
http://bits.blogs.nytimes.com/2008/11/20/does-atts-newfound-interest-in-privacy-hurt-google/

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