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2008年11月24日 (月曜日)

期末試験過去問のシェアリング

大学で講義を受けている学生が,もしその講義にあまり出席していなかったような場合には,期末試験の日が近づくと必死になって様々な情報を集め始めるかもしれない。例えば,自分が受講している講義のノートを友人から借りてコピーする,その講義を担当している教授が過去の期末試験で出題した問題文をかき集める,そして,「一夜漬け」で対応できるように狙いを定め(=ヤマをかけ),とにもかくにも丸暗記で期末試験に臨む,などなど・・・。

しかし,もし大学の中でよい友人を見つけることができなかった場合,その学生はどうしたら良いのだろうか?

現代では,司法修習生のための予備校(司法修習生の卒業試験対策をしてくれる予備校)があると噂されているくらいだから(←真偽のほどは知らない。),仮に大学の期末試験対策のための予備校があってもぜんぜん驚くには値しない。けれども,現実には予備校に通うためにはお金がかかる。お金持ちの家庭であれば東大の優秀な学生を家庭教師に雇ってこっそりと期末試験対策をすることができるかもしれない。実に恥ずかしい話しだ。しかし,大半の家庭はそれほど裕福ではないから,結局,予備校にしても家庭教師にしても大きな産業にはなりにくいのではないかと想像する。

そこで,お金をかけなくてもよい方法として,過去の期末試験の出題(過去問)のシェアリングが試みられることになる。そして,過去問に対する模範答案や模範レポートなどのシェアリングが始まることになる。

噂によると,そのような過去問や模範答案などのシェアリングは日本国内には既に存在しており,しかも,かなり活発になされているということだ。噂を耳にしたのに過ぎないので,真偽のほどは知らないが,それがもし本当だとすれば,そのような「こすからい」ことをしてまで単位が欲しいとは,何とも嘆かわしい限りではある。「恥を知りなさい」と言いたい。

こんなことは日本だけかと思っていたら,何と米国でも同じような例があるらしいということが分かった。インターネット上での過去問シェアリングだ。

 Students Share Exams Online
 Business Week: November 23, 2008
 http://www.businessweek.com/bschools/content/nov2008/bs20081123_091062.htm

この記事を読んでみると,法学上の面白い論点が含まれているということが分かる。つまり,「試験問題には著作権があるか?」という論点だ。

もし著作権があるとすれば,権利者から許諾を得ないで複製された音楽データや映画データをシェアリングするのと同様に,著作権侵害事件ということになってしまうだろう。

著作権侵害(複製権侵害など)があった場合,差し止め請求のほか,損害賠償請求や刑事処罰まであるから,かなり大事になってしまう。

さて,大学教授はどのように考えるべきだろうか?

2ちゃんねるなどの記事を漁って過去問シェアリングの場所を突き止め,著作権法違反の罪で告訴するのが最も正しい大学教授なのだろうか?

仮にこの方法を選択した場合,自分の授業を受講している学生の中から大勢の前科者を排出し続けることになるのだろうが,それは教育ではないように思う。

では,大学教授は,試験問題の著作権についてはひとまず目をつぶった上で,とにもかくにも毎年異なる出題をするように努力し続けるべきなのだろうか?

仮にこの方法を選択した場合,おそらく,毎年異なる内容で出題できるようにどんなに努力してみても,何年かすれば結局同じような出題をせざるを得ない場面に遭遇してしまうに違いないし,過去問が蓄積されるとまだ出題されていないところが逆に絞られてしまうことにもなりかねない。だから,この方法には限界があると言わざるを得ない。

私は,シェアされてもちゃんと採点すればよいのではないかと考えている。シェアした過去問に基づいて作成された模範答案がシェアされていたとしても,それでも個々の学生の能力や学習状況は自ずと判るはずだ。

毎年同じような出題をしており,今年も同じような出題だろうということが容易に推測可能な科目であったとしても,それでも優秀な答案を書く学生から落第点になってしまう学生まで広範囲なばらつきが毎年発生してしまう。このことは,大学で教鞭をとった経験を有する人であれば誰でも理解できることだ。

要するに,仮に毎年同じ内容の出題で期末試験を実施したとしても,大事なことは,試験の採点において,手を抜かず,答案をしっかりと読んで冷静に評価することであり,それによってきちんと成績評価をすることが可能だろうと思う。

もちろん,ズルいことをして上手にすり抜けることに成功する学生はいるだろう。しかし,そのような学生がいたとしても,それはそれでかまわないと考える。そのようなことをした学生は,ズルいことをして一時的には「うまくいった」と思うかもしれないし,学生のズルさを見抜けなかった教授のことを腹の中で嘲笑しているかもしれない。

けれども,「天網恢恢疎にして漏らさず」とのたとえのとおり,人生のどこかできっと自分自身を清算しなければならないときを迎えることになるだろうと信じたい。

自分自身で本当に苦労して得たものでなければ,自分が得たものの真の価値を知ることはできない。

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コメント

小倉先生 コメントありがとうございます。

確かに,ゼロベースから回答させるのは酷ですね。よくよく考えてみると結構難しい問題が含まれてしますし,それに,仮に「著作権法の解釈だとこうなる」と解説できたとしても,何となく常識外れな結論になってしまいかねない要素も含まれているように思うので,なかなか面倒でそうですね。
私個人としては,過去問を解くことは,自分の理解度等を自己点検するための方法として,決して悪い方法ではないと思っています。仮に過去問がすべて公開されていたとしても,それを利用する者がどのような目的でどのように利用するかによって当然結果が異なってくるはずだし,それほどうるさく言うべき問題でもないように思います。
けれど,きっと困惑したり怒ったりする先生は存在するでしょうね。(笑)

投稿: 夏井高人 | 2008年11月26日 (水曜日) 14時56分

夏井先生

そんな問題をゼロベースで回答せよというのは学部学生には無茶な話なので,当然疑似ソクラテスメソッドで,一つ一つ論点をつぶさせています。

それはともかく,私の母校では学部試験の過去問というのは事務局がプリントアウトして無償配布するものだったので,現在のアルバイト先ではそういう扱いをしていないというのは最初は新鮮でした。

投稿: 小倉秀夫 | 2008年11月26日 (水曜日) 11時53分

小倉先生 コメントありがとうございます。

「試験問題に著作権はあるか?」は本当に結構難しい問題の一つですね。

ご指摘のとおり,一律に考えることはできず,国立大学法人や私立大学等の区別をした上で,法人著作ないし職務上の著作の区別をし,かつ,学則や契約条項の内容によって区別した上でないと一応の結論に達することさえできないだろうと思います。

この点に関する認識やルールがしっかりしていないと,大学と教員との間で紛議が発生することもあり得ますね。

ところで,小倉先生のゼミ生さんからの回答はいかがでした?(笑)

投稿: 夏井高人 | 2008年11月25日 (火曜日) 09時06分

学部試験の問題と著作権については,昔ゼミの課題で出したことがあります。

職務著作の成否(あれは大学の著作名義なのか,出題者たる教員の著作名義なのか)を含めて,まじめにやると検討課題は多いのです。

投稿: 小倉秀夫 | 2008年11月25日 (火曜日) 08時53分

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