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2008年11月29日 (土曜日)

Googleのサービスに関する誤解の根源

Googleが提供する様々なサービスについて,驚くほど多くの問題が指摘されるようになってしまった。技術面からの指摘が多いけれども,法的問題としてはプライバシーや個人情報保護という点において問題があるという指摘が多い。

私もここ数週間ずっと考え続けてきた。そして得た結論が一つある。

それは,Googleのサイトには日本国の法令を遵守するという記載が存在しないにもかかわらず,「米国商務省のセーフハーバーに登録している」,「プライバシーポリシーを遵守する」という日本語の記載があるがゆえに,利用者である日本人に対して,「日本国の個人情報保護法が遵守されている」という誤解を与えているということだ。

Googleは,その利用者に対し,日本国の個人情報保護法を遵守するとは一度も約束していない。にもかかわらず,上記のような文言が存在するために,利用者は,よく読みもしないまま「当然に日本国の個人情報保護法を遵守する趣旨だ」と即断してしまっている可能性が高い。普通の人ならば,そのように誤解してしまうのが当然だ。

実際に,Web上のあちこちに存在する批判記事を読み漁ってみると,「プライバシー保護」については日本国で考えられているようなプライバシー保護を前提にした議論がなされており,「個人情報保護」についても日本国の個人情報保護法に基づく個人情報取扱事業者としての様々な義務を前提にした批判がなされている。

たしかに,Googleの日本法人及びその従業員(アルバイト従業員及び派遣従業員を含む。)に対しては日本国の個人情報保護法の適用がある。彼らは,この法律に定めている義務を遵守しなければならない。しかし,仮に義務違反行為があったとしても,日本国の主務大臣は何も指導・監督をしないし,監督する気もないし,また,その能力もなさそうなので,結局,違法行為がそのまま放置され続けることになる(日本国の個人情報保護法では,各セグメント毎に主務大臣が個人情報保護に関する監督行政を司ることになっている。例えば,電気通信分野であれば総務大臣が主務大臣となり,情報サービス産業分野であれば経済産業大臣が主務大臣となる。しかし,これらの大臣は個人情報保護の専門家ではない。つまり,個人情報保護に関する監督行政のトップとしての能力はないし,個人情報保護に関する監督行政のトップとしての能力を発揮するために各省庁の大臣に選任されているわけではない。このことは,現行の個人情報保護法に含まれている幾多の欠陥の中でも最大にしてかつ致命的な欠陥だろうと考える。)。そして,Googleは,「日本国の法令を完全に遵守する」とは一度も宣言していない。

このことは,考えてみれば当たり前のことで,Googleは,日本の企業ではない。Google本社としては,米国の法令を遵守すればそれで足りるのだ。

ところが,米国の法制は,日本国の個人情報保護法のような枠組みとは全然異なるものとなっている。このことは,一般にはあまり認識・理解されていないことの一つかもしれない。

一般に,企業がクロスボーダーでビジネスをするのはかまわない。しかし,要するに,どの企業であっても,「すべての国の法令を完全に遵守することなどできるわけのないことだ」という非常に当たり前のことに気付くべきだろう。

おそらく,Googleは,これまで問題として指摘されてきた部分については,何らかの技術的な改善を加えていくことになるだろう。ただし,完全に問題のないシステムになるかどうかは相当に疑問だ。

他方,日本語で書かれた注意書きの記載内容は,既に(微妙に)書き換えられてきている。そして,何らかのかたちで,より免責範囲が拡張できるような変更が加えられ続けることになるだろう。しかし,それは,結果的に,日本国の消費者契約法によって無効とされるべき契約条件を作り続けることになるかもしれない。今後,この点に関する批判が高まる可能性がある。もしそのような批判が現実に出てきた場合,Googleは日本の企業ではないので,この問題に対して正面から対応しようとしないかもしれない。ちなみに,日本国の政府がGoogleに対して「日本国の法令を遵守するように」求めた形跡はないから,Googleとしては「何も問題ない」と考えても,それは不自然でも何でもないことかもしれない。

また,もしGoogleが日本国できちんとした対応をするとなれば,他の全ての国々が黙っていないだろうと思う。少なくとも,世界各国は「わが国の法令を完全に遵守せよ」と要求することになるだろう。そして,もしGoogleが本気で日本国を含め世界各国の法令を完全に遵守しようとすれば,当然のことながら,莫大なコストが発生してしまい,その結果,Googleが破滅してしまうことは明らかだ。

要するに,「適法性を確保しよう」と本気で考えるならば,クロスボーダーのビジネスにおいて黒字決算を出すことのできる可能性は一般に想像されているよりもすっと低いかもしれないという誰が考えても当たり前の結論に到達することになる。

問題の根源は,どうもここらへんにあるのではないかと思う。

その解決策は,ひとつしかない。つまり「問題が発生しそうな要素を含むサービスの提供をしない」ということだ。プライバシーや個人情報その他様々な法律問題と関連しそうな情報やデータを一切扱わないことにすれば,問題が発生する余地はない。

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