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2008年11月27日 (木曜日)

証拠開示決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件(平成20(し)338号)

最高裁は,警察官が私費で購入したノートに記載していた取調メモについて,証拠開示を是認した原審の判断を維持した。

民事・刑事の場合を含め,一般に,証拠開示については,様々な理由で拒否されることがある。訴訟や訴訟の準備段階において,特段の問題もない場合には,あえて証拠開示請求をするまでもなく,相手方が任意に閲覧を許したり証拠として提出することが通例なのだが,そうでない場合もあるのだ。

このような場合において,証拠開示を拒む理由として,個人情報や企業秘密が含まれているという理由があげられることがある。

しかし,そこで理由としてあげられている「個人情報」なるものが個人情報保護法等によって保護されるべき個人情報ではなく,まさに開示によって明らかにされるべき「個人の悪事」そのものである場合があるし,また,「企業秘密」についても不正競争防止法等によって保護されている営業秘密とは関係がなく,まさに開示によって批判されるべき「企業の悪事」であることもある。そのようにして開示されること非常に都合の悪いものに限って,開示拒否がなされることが多々ある。

刑事事件における警察官の捜査メモについて開示が請求される場合には,また少し違った状況や要素もあるので別の角度からの検討が必要になることがある。しかし,それでも,既に起訴された被告人の捜査に関する資料であれば,弁護人に対して開示するのが当然の原則と考えるべきだろう。過去に発生した冤罪事件の中には,被告人にとって非常に有利な証拠が客観的には存在していたにもかかわらず捜査機関がそれを秘匿していたために何の落ち度もない市民が冤罪によって有罪とされ服役することになってしまった事例がある。もし,捜査関係資料が起訴後に全面的に開示されていれば,そのような冤罪の発生を防ぐことができたかもしれない。

今回の最高裁決定は,特段に新しいことを述べているものではないが,実務上参考になる。

[決定要旨]
警察官が私費で購入したノートに記載し,一時期自宅に持ち帰っていた本件取調べメモについて,同メモは,捜査の過程で作成され,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易な証拠であり,弁護人の主張(判文参照)と同メモの記載の間には一定の関連性が認められ,開示の必要性も肯認できないではなく,開示により特段の弊害が生じるおそれも認められず,その証拠開示を命じた判断は結論において是認できる。
(補足意見及び反対意見がある。)

 最高裁判所第一小法廷平成20年09月30日決定
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081001161151.pdf

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