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2008年11月23日 (日曜日)

日めくりカレンダー事件控訴審判決(平成20年(ネ)第10008号慰謝料請求控訴事件)

265枚1セットで構成されるデジタル写真について,編集著作物の同一性保持権侵害を理由として慰謝料等の請求をしていた事件の控訴審において,知的財産高等裁判所は,平成20年06月23日,控訴を棄却する判決をした(平成20年(ネ)第10008号慰謝料請求控訴事件)。原審である東京地方裁判所は,原告の請求を棄却する判決をしていた(東京地裁平成18年(ワ)第29460号)。

 知的財産高等裁判所平成20年06月23日判決
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080624101127.pdf

主に四季の風景や野花などを主題とした自然写真を作品として発表している写真家(原告・控訴人)が,花の写真365枚につき,1日1枚で1年分とする日めくりカレンダー用デジタル写真集を作成し,これを携帯電話から配信される日めくりカレンダー用に富士通(被告・被控訴人)に代金273万7500円で譲渡した。ところが,富士通は,それらの写真の中から,携帯電話待受画面用の画像として平成17年7月までに週に1枚のみを配信しただけだった。そこで,原告(控訴人)は,1日1枚ずつ配信しない点について編集著作物の同一性保持権の侵害を主張するとともに,予備的に,著作権侵害がないとしても,毎日1枚ずつ配信されると期待していた原告の期待権侵害を主張し,慰謝料の支払いを求め,訴えを提起したが,原審である東京地方裁判所が原告の請求を棄却する旨の判決をしたため,控訴していた。

知的財産高等裁判所は,本件の花のデジタル写真集が編集著作物に該当するかどうかについて,「著作権法12条は,編集著作物につき「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,著作物として保護する」と規定しているところ,前記2認定のとおり,控訴人が撮影した花の写真を365枚集めた画像データである本件写真集は,1枚1枚の写真がそれぞれに著作物であると同時に,その全体も1から365の番号が付されていて,自然写真家としての豊富な経験を有する控訴人が季節・年中行事・花言葉等に照らして選択・配列したものであることが認められるから,素材の選択及び配列において著作権法12条にいう創作性を有すると認めるのが相当であり,編集著作物性を肯定すべきである。」と判断した。

しかし,その同一性保持権侵害については,「著作権法20条は同一性保持権について規定し,第1項で「著作者は,その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し,その意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする」と定めているところ,前記2認定のとおり,平成15年5月27日ころまでに控訴人から本件写真集の個々の写真の著作物及び全体についての編集著作権の譲渡を受けた被控訴人が,別紙4記載の各配信開始日に,概ね7枚に1枚の割合で,控訴人指定の応当日前後に(ただし,正確に対応しているわけではない)配信しているものであって,いわば編集著作物たる本件写真集につき公衆送信の方法によりその一部を使用しているものであり,その際に,控訴人から提供を受けた写真の内容に変更を加えたことはないものである。そうすると,著作権法20条1項が「変更,切除その他の改変」と定めている以上,その文理的意味からして,被控訴人の上記配信行為が本件写真集に対する控訴人の同一性保持権を侵害したと認めることはできない(毎日別の写真を日めくりで配信すべきか否かは,基本的には控訴人と被控訴人間の契約関係において処理すべき問題であり,前記2認定の事実関係からすると,そのような合意がなされたとまで認めることもできない)。」と判断した。要するに,富士通は著作権法が定める同一性保持権を侵害したことにはならないと判断した。

そして,期待権侵害の主張については,「本件写真集の花の画像の具体的な配信方法の記載はない。」,「このように,本件写真集に関する著作権譲渡契約に関し,控訴人が配列した順序に従い毎日花の写真を変えて被控訴人が配信するとの点について,その契約に関連する内容として上記注文書等に記載されていないことはもちろん,上記2で認定した事実経過に照らせば,控訴人においてそのような期待を抱くことが正当と認められるような事情も存しないというべきである。仮に控訴人が被控訴人がそのような方法で使用(配信)することについて事実上の期待を内心において抱いたとしても,これを「期待権」ないし何らかの法的保護に値すべき利益と認めることはできない。そうすると,控訴人の期待権侵害を理由とする請求も理由がないというべきである。」と判断した。つまり,具体的な約束が何もなされなかったのだから,期待権も生ずることはないと判断した。

以上の理由により,原告(控訴人)の控訴が棄却された。

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